EHA2014速報

Poster Presentation 1014

PARAMETERS OF CELL IMMUNITY IN PATIENTS WITH APLASTIC ANEMIA AND THEIR RELATION TO PNH-CLONE

Olga Rozanova et al.
Laboratory of immunohematology, Research Institute of hematology and transfusiology, Saint-Petersburg, Russian Federation

背景

再生不良性貧血(aplastic anemia, AA)の病態背景として自己免疫異常を介した造血抑制があると考えられている。実際、AA患者に対する免疫抑制療法(immunosuppression therapy, IST)は高い奏功率を示す。特にPNH型血球陽性AA 患者における奏功率は高い。このPNH型血球陽性AA群に特異的な免疫病態を見いだすことを目的として、41例のロシア人AA患者を対象とし、PNH型血球とリンパ球分画を検討した。

方法

PNH型血球検査として、顆粒球についてはFLAER/CD24/CD15/CD45を用いたmulti-colorフローサイトメトリー法を、赤血球についてはCD59を用いたtwo-colorフローサイトメトリー法を用いてPNH型血球の有無、割合を解析した。リンパ球分画検査として、末梢血および骨髄におけるCD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD19+B細胞、CD16+/CD56+NK細胞、CD16+CD3+NKT細胞、HLA-DR+/CD3+活性化T細胞、CD4+/CD25+制御性T細胞を解析できるmulti-colorフローサイトメトリー法を用いて解析した。

結果

1.
ロシア人AA患者の59.6%にPNH型血球が検出された。
2.
溶血所見は、典型的にはPNH型血球が10%以上で明らかとなった(図1)。
3.
CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD19+B細胞はPNH型血球陽性例と陰性例の間でほとんど差がなかった。もっとも、PNH型血球陽性例ではCD8+T細胞が増加し、CD16+/CD56+NK細胞とCD19+B細胞が減少する傾向が見られた。この傾向は末梢血、骨髄とも同じであった。微少なリンパ球分画であるCD16+CD3+NKT細胞はPNH型血球の陽性陰性によらずAA患者で増加傾向にあった。一方、HLA-DR+/CD3+活性化T細胞はPNH型血球が10%より多い症例で有意に増加していた。CD4+/CD25+制御性T細胞はどちらの群でも増加していた。

図1. PNHクローンサイズとLDHレベルの相関

図1. PNHクローンサイズとLDHレベルの相関

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結論

PNH型血球陽性AA群と陰性群の間ではリンパ球分画障害にいくらかの差があることが見いだされた。

コメント

AA患者における免疫病態の解明を目指したロシアからの報告である。
以下の2点で有意義な研究と思われた。

1.
コーカソイドAA患者においてもPNH型血球の陽性率は約60%であることが示された点。
2.
溶血所見との相関するPNH型血球の割合は10%程度ではないかと示された点。

ちなみに、PNH型顆粒球を検討するためのフローサイトメトリー法として、国際的には本研究のようにFLAER/CD24/CD15/CD45を用いたmulti-colorフローサイトメトリー法が用いられることが多い。これはClinical and Laboratory Standards Institute (CLSI)がこのプロトコールを推奨しているためである。この方法の感度は、本研究の結果から見ても本邦において日本PNH研究会が展開しているOPTIMAで用いているFLAER/(CD45)/CD11b/7AADを用いた高精度法と同様に思われるが、別研究(Poster 1018)では全く精度の低い結果が出ており、閾値の設定方法など確認する必要がある。OPTIMAの研究成果を国際的に発表する前提として、高精度法とCLSIプロトコールによるフローサイトメトリー法の比較検討も必要だと思われた。

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