ASH2011速報

ASH2011速報

西村純一先生

2011年12月10日から13日まで米国サンディエゴにおいて、第53回米国血液学会が開催された。全体的な印象としては、最近のトレンドを反映して、iPS細胞関連の演題、全ゲノム解析関連の演題、分子標的療法の成績などが目立った。 PNH関連では、エクリズマブ関連の演題が一段落し、従来からの課題であるPNHクローン拡大機序に関する研究に加え、今年は小児のPNHに関する演題、PNHにおける造血幹細胞移植に関する演題などが目を引いた。

その中から、PNHクローン拡大機序に関するオーラル発表2演題[発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)におけるin vitro長期骨髄培養モデル:骨髄内造血幹細胞のクローン性拡大に対するT細胞の直接作用]、[発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)発症機序の新たな概念:病理的PNH造血幹前駆細胞(HSPCs)は、接着不良、遊走性の亢進により運動性が高まり、正常HSPCsを造血幹細胞ニッチから駆逐するか?]、ポスター発表から小児PNHに関する2演題[小児患者における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の臨床的特性:成人PNH患者との比較(国際PNHレジストリ)]、[発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の小児・青年期患者におけるエクリズマブの有効性と安全性]をハイライトした。

Poster Presentation 2102

小児患者における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の臨床的特性:成人PNH患者との比較(国際PNHレジストリ)

Clinical Characteristics of Classical Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH) in Pediatric Patients: A Comparison with Classic PNH in Adults. An International PNH Registry Study

5大陸、21ヵ国、204施設を対象とした国際PNHレジストリのデータを用いた、成人PNHと小児PNHの臨床的特性の比較が行われた。 これまでの報告と異なり、骨髄不全疾患の頻度に優位な差は認められなかった。 一方で、成人に比べ血栓塞栓症の発症率が低いことが示された。

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Poster Presentation 1034

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の小児・青年期患者におけるエクリズマブの安全性と有効性

Safety and Efficacy of Eculizumab in Children and Adolescents with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria

米国における小児・青年期のPNH患者を対象とした、エクリズマブの有効性と安全性を判定する12週間のオープンラベル多施設共同試験の結果が示された。 これまでの成人PNH患者の成績と同様の有効性と安全性が確認された。

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ASH 2011 Oral 731

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)におけるin vitro長期骨髄培養モデル:PNH細胞のクローン性拡大に対する骨髄内T細胞の直接作用

An In Vitro Model of the Bone Marrow in Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria Showing a Direct Effect of T-Cells within the Bone Marrow Allowing Clonal Expansion

健常者およびPNH患者由来の骨髄幹細胞の長期培養による、コロニー形成能の比較が英国で行われた。その結果、PNH幹細胞の増殖は、正常幹細胞と比較して本質的な優位性を示さないことが改めて示された。一方で、T細胞による免疫学的攻撃がない環境では、正常幹細胞はPNH幹細胞よりも有意に増殖する可能性が示された。

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ASH 2011 Oral 732

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)発症機序の新たな概念:PNH造血幹/前駆細胞(HSPCs)は、接着不全、走化性亢進により運動性が高まり、正常HSPCsを骨髄ニッチから駆逐するか?

A Novel View of Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH) Pathogenesis: Do Pathologic PNH Hematopoietic Stem/Progenitor Cells (HSPCs) Displace Normal HSPCs From Their Niches in Bone Marrow Because They Are More Motile Due to Defective Adhesion and Enhanced Migratory Properties?

PNH患者10例の末梢血単核細胞より単離した正常HSPCsとPNH型HSPCsを用い、HSPCsの骨髄間質細胞に対する接着能、SDF-1/S1Pに対する走化反応について比較検討した。その結果、脂質ラフト形成不全のある、PNH型HSPCsでは、移動能が亢進した。さらに、補体介在性溶血により放出されるS1Pに反応して、PNH型HSPCsは末梢血に優位に動員された。すなわち、PNH型HSPCsは移動能の亢進により、正常HSPCsに比べて優位に骨髄ニッチを占めることができ、PNHにおけるPNH型血球の拡大に寄与している可能性が示唆された。

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