ASH2012 December 8-11
Georgia World Congress Center , Atlanta, GA
西村 純一 先生
大阪大学大学院
医学系研究科 血液・腫瘍内科学
2012年12月8日から11日まで米国アトランタにおいて、第54回米国血液学会が開催された。全体的な印象としては、参加人数も2万人を超え、プログラム編成も従来の大きなテーマから論点を絞り、その反面多彩なトピックスが用意されたようにみえる。PNH関連では、20題を超す演題が提出され、約半数がエクリズマブ関連の演題であった。エクリズマブが広く浸透し、さまざまな効果や問題点がみえてきた影響と思われる。興味深い演題も数多くみられたが、オーラル発表に選ばれたのが2題に留まったのは少し残念な気がする。
その中から、新規治療と病態(クローン拡大)に関するオーラル発表2演題[PNHにおける新規補体修飾剤:C3転換酵素ペプチド・タンパク質阻害剤は、in vitroにおける赤血球表面への補体C3の沈着およびそれに続く溶血を阻止する]、[PNH患者由来の自己反応性T細胞は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)を特異的に認識する]、ポスター発表からエクリズマブ反応性に関する2演題[補体受容体1(CR1)遺伝子における多型は、PNH患者のエクリズマブに対する治療反応性に関連する]、[PNHにおけるエクリズマブ治療に対する治療反応性の予測因子]、血栓症リスクに関する演題[溶血所見および臨床症状を呈するPNH患者における血栓塞栓症リスク]をハイライトした。
Genetic Polymorphism of the Complement-Receptor-1 (CR1) Gene Correlates with the Clinical Response to Eculizumab of Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH)
PNHにおいて、補体C5に対するモノクローナル抗体エクリズマブ投与による貧血の改善の程度は患者ごとによって大きく異なる。この現象は赤血球膜上のCR1発現量に影響を与える遺伝子多型と関連する可能性が示された。
<執筆> 山本 正樹 先生
大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学
Predictors of Response to Eculizumab Therapy in Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria
エクリズマブに対する治療反応性にはバラツキが認められるため、治療反応性の予測因子の同定は重要である。本研究ではPNH赤血球クローンが減少した患者でヘモグロビン(Hb)値が正常化し、Complete response(CR)の予測を可能とすることが示唆された。また、従来の臨床試験における非適応患者を含めた大部分のPNH患者において、エクリズマブが有効である可能性が示された。
<執筆> 大里 真幸子 先生
大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学
370 Novel Complement Modulators for Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria: Peptide and Protein Inhibitors of C3 Convertase Prevent Both Surface C3 Deposition and Subsequent Hemolysis of Affected Erythrocytes in Vitro
PNHにおいて抗C5治療はPNH赤血球上にC3の沈着をもたらし、C3介在性血管外溶血を引き起こすため、抗C5治療の貧血改善におけるベネフィットは限定的である可能性がある。より上流の補体カスケードの阻害について、本研究では新規C3転換酵素阻害剤による補体活性阻害が効果的にPNH赤血球へのC3の沈着およびそれに続く溶血を阻害することが確認された。
<執筆> 山本 正樹 先生
大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学
647 Autoreactive T Cells from Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH) Specifically Recognize Glycosyl-Phosphatiidyl-Inositol (GPI)
本研究では、PNHにおける臨床症状の背後にある基礎病態はT細胞媒介型攻撃であり、PNHではPIG-A 変異クローンがT細胞媒介型攻撃を逃れるという仮説を検証した。PNH患者ではCD1d拘束性GPI特異的CD8陽性T細胞が認められる。iNKT細胞同様、反応性T細胞にもinvariant鎖が検出され、CD1dにおけるGPIの認識に必要となる可能性が示唆される。
<執筆> 西村 純一 先生
大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。
Risk of Thromboembolism in Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria Presenting with Elevated Hemolysis and Additional Clinical Symptoms
PNHにおける腹痛、胸痛、呼吸困難およびヘモグロビン尿などの臨床症状は患者のQOLを低下させるだけでなく、血栓塞栓症(TE)リスクの上昇に関与している可能性がある。本研究では、明確な溶血所見(LDH値(LDH≥1.5 ULN))に加えて腹痛、胸痛などの臨床症状を呈するPNH患者では、溶血所見のみの患者よりTE発症リスクが高いことが示された。
<執筆> 大里 真幸子 先生
大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学
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