Lucia Gargiulo, et al. Centre for Haematology, Imperial College London, London, United Kingdom
本研究では、PNHにおける臨床症状の背後にある基礎病態はT細胞媒介型攻撃であり、PNHではPIG-A 変異クローンがT細胞媒介型攻撃を逃れるという仮説を検証した。PNH患者ではCD1d拘束性GPI特異的CD8陽性T細胞が認められる。iNKT細胞同様、反応性T細胞にもinvariant鎖が検出され、CD1dにおけるGPIの認識に必要となる可能性が示唆される。
PNHにみられる血管内溶血および重篤な後天性易血栓性は、赤血球上のGPI結合型タンパク質CD55/CD59の欠損による補体活性化に対する感受性増加の結果であるのに対し、汎血球減少は骨髄不全のあらわれと考えられる。これらの事実は、PNHと再生不良性貧血との強い関連と相まって、PNHにおける基礎病態はPIG-A 変異クローンがT細胞介在型攻撃を逃れ、増加するという仮説に至る。本研究では、PIG-A 変異クローンが、CD1dによって提示されると予想されるGPI分子そのものを標的にする自己免疫T細胞の攻撃から逃れるという仮説を検証した。
PNH患者では健常人対照とは異なり、CD1d拘束性GPI特異的CD8陽性T細胞の増加が認められた。PNH患者の反応性T細胞に検出された新規TCRα鎖TCRVα21は、CD1dによるGPIの認識に必要と考えられ、これらの反応性T細胞がPNHの骨髄不全におけるPNHクローンの選択的拡大に関与している可能性が示唆された。
PNHにおける臨床症状はPNHクローンの拡大にともなって発現するが、PNHクローンの拡大は造血幹細胞におけるPIG-A変異のみでは説明できず、GPI陰性細胞が免疫学的攻撃から逃れることでPNHクローンが相対的に増加し、さらになんらかの付加的な異常が加わることで最終的に骨髄、末梢血ともにPNH細胞に凌駕されると広く理解されている。本発表は、新規invariant TCRα鎖を有するGPI-AP特異的CD1d拘束性T細胞がPNH患者で増加していることを、証明したものである。 これらの結果は、PNH細胞が免疫学的攻撃を逃れる機序として、PNH細胞ではGPI産生能が消失するので、GPI特異的CD1d拘束性T細胞による免疫学的攻撃に対して、PNH細胞が障害を逃れるという仮説を示唆している。すなわちGPI糖脂質自体が自己抗原として働くとする説であるが、実際にGPIがCD1dに結合して、特定のTCRに提示されるのかさらなる解析が待たれる。
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。