Jong-Wook Lee, et al. Seoul St. Mary’s Hospital,
The Catholic University of Korea, Seoul, South Korea
PNHにおける腹痛、胸痛、呼吸困難およびヘモグロビン尿などの臨床症状は患者のQOLを低下させるだけでなく、血栓塞栓症(TE)リスクの上昇に関与している可能性がある。本研究では、明確な溶血所見(LDH値(LDH≥1.5 ULN))に加えて腹痛、胸痛などの臨床症状を呈するPNH患者では、溶血所見のみの患者よりTE発症リスクが高いことが示された。
PNHは稀な致死性疾患であり補体介在性の慢性溶血を特徴とする。慢性的な溶血は、PNHにおける末端臓器の損傷や早期死亡を引き起こす血栓塞栓症(TE)リスクの増加と関連している。また、診断時におけるLDH≥1.5 ULNは、PNH患者における断片的な溶血所見のマーカーとなる。そこで本研究では、LDH≥1.5 ULNで示されるLDH高値および腹痛、胸痛、呼吸困難あるいはヘモグロビン尿のうちのいずれかを呈するPNH患者および溶血所見のみを呈する患者におけるTEリスク増加の有無を比較検討した。
PNH患者における診断時のLDH≥1.5 ULNは、TEリスクを7倍に高める独立したリスク要因である。LDH高値に加え、腹痛、胸痛、呼吸困難あるいはヘモグロビン尿症などの臨床症状を呈する患者でTEリスクがさらに増加することが示された。コントロール不良な補体活性化および溶血の進行によって臨床症状は顕性化するため、症候性PNH患者はTEおよび死亡に対する高いリスクを有することを認識すべきである。
本結果はPNH患者に対する治療の早期介入の重要性および、LDH 高値症例における慎重なモニタリングの必要性を示すものである。
<大里 真幸子>
レトロスペクティブな解析ではあるが、LDH高値症例に示される溶血及び腹痛、胸痛、呼吸困難、ヘモグロビン尿症などの臨床症状とTEリスクの関連を示す本研究の知見は、PNH患者に対する治療介入に新たな視点をもたらすものである。実際には多くの臨床的PNH患者がLDH≥1.5 ULNを呈しているため、臨床的症状を呈する患者に対しては慎重な経過観察と早期治療の検討の必要性を示唆するものである。
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。