SIGNIFICANT DISEASE BURDEN EVALUATED BY FACIT-FATIGUE AND EORTC QLQ-C30 IN PATIENTS WITH PAROXYSMAL NOCTURNAL HEMOGLOBINURIA FROM A KOREAN PROSPECTIVE PNH REGISTRY
Jong Wook Lee et al.
The Catholic University of Korea, Rebublic of Korea
背景
PNHは補体溶血や血栓により様々な臓器に器質的障害を来すが、疲労・腹痛・胸痛・呼吸困難・ヘモグロビン尿など『生活の質』も障害される。しかし、この生活の質に関しての知見は十分とは言えない。
そこで、韓国の前方向視的患者登録システム(the Korean prospective PNH Registry)に登録された70名の未治療PNH患者(エクリズマブ治療や骨髄移植を受けた患者は除外)を対象として、疲労などのPNH関連症状の評価を行った。
方法
患者登録時点と6ヶ月後にthe European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire C30, version 3 (EORTC QLQ-C30)を用いた自己申告アンケート調査を行った。さらに、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy Fatigue subscale version 4 (FACIT-Fatigue)を用いた患者疲労評価を行い、30点未満を重度と定義した。
結果
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登録患者内容
患者は男性29例、女性41例、年齢は19-73歳(中央値45歳)、6ヶ月時点でのLDH値の中央値は上限値の4.75倍で、31名(44.3%)が赤血球輸血を要した。
- 2.
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主たるPNH関連症状
疲労(n=61, 87.1%)、呼吸困難(n=55, 78.6%)、ヘモグロビン尿(n=50, 71.4%)、胸痛(n=41, 58.6%)、腹痛(n=33, 47.1%)、嚥下障害(n=25, 35.7%)であった。(図1)
- 3.
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患者疲労評価
FACIT-Fatigueによる患者疲労評価の結果、患者は診断時(29点)から6ヶ月時点(31点)まで持続的に疲労していることが明らかとなった。
- 4.
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疲労の程度とPNH関連症状の関係
FACIT-Fatigueによる患者疲労評価で患者を重度群(30例、43%)と軽度〜中等度群(40例、57%)の2群に分け、PNH関連症状との罹患率を示したのが表1である。溶血や貧血は疲労の程度と相関していなかったが、腹痛、胸痛、嚥下障害は重度群で多く認められた。
図1. EORTC QLQ-C30に基づく自発報告による臨床症状(6ヶ月時点)
表1.FACIT-Fatigueによる重症度分類別の臨床症状の割合
結論
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- 韓国人PNH患者における主なPNH関連症状は疲労、呼吸困難、ヘモグロビン尿、胸痛、腹痛、嚥下障害であった。
- 2.
- ほとんどのPNH患者は長期にわたり疲労を感じていた。疲労の重症度は、胸痛・腹痛・嚥下障害の罹患率と相関するなど、生活の質に負のインパクトを与えていた。
- 3.
- EORTC QLQ-C30を用いた自己申告によるアンケート調査とFACIT-Fatigueを用いた疲労評価は、PNH患者の生活の質を包括的かつ的確に評価できることから、疫学調査では必須と考えられた。
コメント
PNH患者の生活の質を検討した韓国からの報告である。
疲労・胸痛・腹痛・嚥下障害などのPNH関連症状の罹患率は、欧米患者を対象とした既報とほぼ同様であったが、本研究では、特に疲労評価の重要性が強調された。本邦でもPNH患者診療の上で大いに参考になる知見と思われた。