再生不良性貧血に対する免疫抑制療法と発作性夜間ヘモグロビン尿症に対するエクリズマブ治療を同時に行った症例のまとめ:英国での経験
Concurrent Treatment of Aplastic Anaemia (AA) with Immunosuppressive Therapy and Paroxysmal Nocturnal Haemoglobinuria (PNH) with Eculizumab: A UK Experience
Morag Griffin, et al.
St.James’ Institute of Oncology, Leeds Teaching Hospitals, Leeds, UK
英国では再生不良性貧血(AA)の発症頻度は100万例に1~2例である。AA患者の少なくとも半数は発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)クローンを保有しており、AAとPNHに対する治療を同時に行う患者が存在する。本研究では、これらの患者に対する治療経験を報告する。
UK PNH National Service (Leeds & London)のデータベースをレトロスペクティブに検討し、AAに対する治療を開始して1年以内にエクリズマブ投与を開始した患者、または、すでにエクリズマブが投与されておりAAに対する治療を開始した患者を抽出した。AAに対する治療反応性はAA診療ガイドラインに則って評価した。
References
Scheinberg P, et al. Haematologica 2010; 95: 1075-1080
Killick SB, et al. Br J Haematol 2016; 172: 187-207
監修:川口 辰哉 先生(熊本大学医学部附属病院 感染免疫診療部)
PNH患者では、しばしば造血障害を伴うことから、エクリズマブと免疫抑制治療が併用される機会が少なくないと思われるが、これまで併用効果についてのまとまった報告は認められない。本発表は、先行疾患がPNHか再生不良性貧血(AA)かにかかわらず、免疫抑制療法(IST)とエクリズマブの併用治療を実施した英国患者を解析対象とし、エクリズマブを投与していない年齢を一致させたAA患者と比較することで、ISTの併用効果を評価している。予想通りエクリズマブ併用の有無にかかわらずIST効果は同等であり、PNH造血不全でもAAと同様の免疫機序を示唆する結果が再現されている。本邦でも同様の解析を行い、特にPNHが先行する造血不全に対する治療方針に関するエビデンス蓄積が必要ではないかと感じた。
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。