補体C3阻害薬APL-2の発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬としての可能性:健康ボランティアを対象とした第I相試験2件の結果
APL-2, a Complement C3 Inhibitor for the Potential Treatment of Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH): Phase I Data from Two Completed Studies in Healthy Volunteers
Federico V Grossi, et al.
Apellis Pharmaceuticals Inc, Crestwood, KY, USA
APL-2は補体C3のペグ化環状ペプチド阻害薬である。本研究では、健康ボランティア51名を対象にALP-2を単回および反復皮下投与したときの安全性、忍容性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)を検討した。どちらもプラセボ対照とし、単回投与試験ではAPL-2 45、90、180、360、720、1,440mgを単回皮下投与し、反復投与試験ではAPL-2 30、90、180、270mg/日を28日間連日皮下投与した。
C5阻害薬ALXN1210による発作性夜間ヘモグロビン尿A症患者の補体介在性溶血の急速かつ完全、持続的な阻害:用量漸増試験のフ中間解析
Immediate, Complete, and Sustained Inhibition of C5 with ALXN1210 Reduces Complement-Mediated Hemolysis in Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH): Interim Analysis of a Dose-Escalation Study
Jong-Wook Lee, et al.
Division of Hematology, Seoul St. Mary’s Hospital, College of Medicine, The Catholic University of Korea, Seoul, South Korea
ALXN1210は、頻回投与しなくても補体C5活性を急速かつ持続的に阻害するように設計されたヒト化モノクローナル抗体である。ALXN1210の血中濃度半減期はエクリズマブの3~4倍であることから、投与間隔を延長しても、溶血の抑制が可能だと考えられる1)。
ALXN1210-PNH-103試験(第Ib相試験)では、未治療のPNH患者を対象にALXN1210を2用量で投与し、その安全性、忍容性、有効性を検討した。コホート1の対象は6例で、導入用量は400または 600mg、維持用量は900mg、コホート2の対象は7例で、導入用量は 600または900mg、維持用量は1,800mg とし、いずれも4週ごとに24週間静注投与した。主要エンドポイントはLDHで評価した補体介在性溶血の変化とした。
Reference
1) Sheridan D, et al. Immunobiology 2016; 221: 1158
PNHおよび補体介在性疾患の治療における補体C5を標的としたRNAi(ALN-CC5)皮下投与:PNH患者を対象とした第I/II相試験の予備的結果
A Subcutaneously Administered Investigational RNAi Therapeutic (ALN-CC5) Targeting Complement C5 for Treatment of PNH and Complement-Mediated Diseases: Interim Phase 1/2 Study Results
Nader Najafian, et al.
Alnylam Pharmaceuticals, Cambridge, MA, USA
ALN-CC5は開発中の皮下注RNA干渉剤(RNAi)で、肝臓における補体C5合成を阻害する。進行中の第I/II相試験(Part A/B)では、健康ボランティアにおいてALN-CC5の忍容性は良好で、C5をノックダウンし、補体活性を抑制することが示された。本研究ではPNH患者を対象とした第I/II相試験Part Cの結果を報告する。
対象はPNH患者6例(未治療3例、エクリズマブ既治療3例)で、エクリズマブ併用(減量)下でALN-CC5 200mgまたは400mgを週1回、3~17回皮下投与した。
監修:西村 純一 先生(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学)
今回の3題は、エクリズマブに続く第二世代の治療薬に関するものである。1題目のC3阻害薬APL-2は、エクリズマブでは一部の症例で問題となっている血管外溶血を阻害することにより、ヘモグロビンがさらに増加し、エクリズマブでは輸血依存から脱却できなかった症例も輸血不要になる可能性が期待される反面、感染症のリスクは高まる可能性があり注視していく必要がある。また、連日投与が必要なのが今後の課題となる。2題目のC5阻害薬ALXN1210は、エクリズマブに抗体のリサイクル技術を応用することにより投与間隔を延長し利便性の向上が期待される薬剤で、効果・忍容性はほぼ担保されているものの、長期抑制による有害事象には注意が必要であろう。1回投与量が多くなるのも今後の検討課題であろう。3題目のC5を標的としたRNAi製剤ALN-CC5は、肝臓特異的にRNAを抑制する技術を用いた核酸医薬であるが、C5をRNAレベルでほぼ完全にノックダウンしても、単独ではLDHを十分に抑制できなかった結果を受けて、エクリズマブとの併用の可能性を検討した結果である。この革新的技術は、他疾患にも応用できる可能性がある。第二世代のPNH治療薬を考えるうえで、効果と忍容性はもちろんのこと、投与間隔の延長、投与方法(静注、皮下注、経口)などの利便性、血管外溶血の抑制と感染症リスクのバランス、価格面など多岐にわたるファクターを考慮して、最良の薬剤が淘汰されていくものと思われる。
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。