ASH2016速報

Poster Session

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)など補体介在性疾患に対する新薬の開発が精力的に進められている。ここでは補体C3阻害薬であるAPL-2、補体C5阻害薬であるALXN1210、補体C5のRNA干渉剤(RNAi)であるALN-CC5の第I/II相試験の結果を紹介する。

Poster Session 1251

補体C3阻害薬APL-2の発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬としての可能性:健康ボランティアを対象とした第I相試験2件の結果
APL-2, a Complement C3 Inhibitor for the Potential Treatment of Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH): Phase I Data from Two Completed Studies in Healthy Volunteers
Federico V Grossi, et al.
Apellis Pharmaceuticals Inc, Crestwood, KY, USA

Federico V Grossi先生
Federico V Grossi先生

目的・方法

APL-2は補体C3のペグ化環状ペプチド阻害薬である。本研究では、健康ボランティア51名を対象にALP-2を単回および反復皮下投与したときの安全性、忍容性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)を検討した。どちらもプラセボ対照とし、単回投与試験ではAPL-2 45、90、180、360、720、1,440mgを単回皮下投与し、反復投与試験ではAPL-2 30、90、180、270mg/日を28日間連日皮下投与した。

結果

被験者はAPL-2群に40名、プラセボ群に11名が割り付けられた。
治療関連有害事象の発現状況をに示す。両試験で最も高頻度に発現した治療関連有害事象は頭痛で、発現頻度はAPL-2群12名(30%)、プラセボ群3名(27%)であった。
APL-2群では感染症/寄生虫症が10名(25%)で発現し、そのうち1名は帯状疱疹であった。
APL-2 270mg/日を28日間反復投与した4名中3名で注射部位反応が発現した。
APL-2単回投与後のTmaxは5~8日、両試験ともに半減期(t1/2)は8~10日であった。
補体C3活性はAPL-2濃度依存性に低下した。

結論

APL-2 の安全性、忍容性は良好であった。
APL-2 180mgまたは270mg/日反復投与開始後8日には溶血活性が低下し、その効果は投与期間中持続した。

表 治療関連有害事象の発現状況

表 治療関連有害事象の発現状況

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Poster Session 2428

C5阻害薬ALXN1210による発作性夜間ヘモグロビン尿A症患者の補体介在性溶血の急速かつ完全、持続的な阻害:用量漸増試験のフ中間解析
Immediate, Complete, and Sustained Inhibition of C5 with ALXN1210 Reduces Complement-Mediated Hemolysis in Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH): Interim Analysis of a Dose-Escalation Study
Jong-Wook Lee, et al.
Division of Hematology, Seoul St. Mary’s Hospital, College of Medicine, The Catholic University of Korea, Seoul, South Korea

Jong-Wook Lee先生
Jong-Wook Lee先生

目的・方法

ALXN1210は、頻回投与しなくても補体C5活性を急速かつ持続的に阻害するように設計されたヒト化モノクローナル抗体である。ALXN1210の血中濃度半減期はエクリズマブの3~4倍であることから、投与間隔を延長しても、溶血の抑制が可能だと考えられる1)
ALXN1210-PNH-103試験(第Ib相試験)では、未治療のPNH患者を対象にALXN1210を2用量で投与し、その安全性、忍容性、有効性を検討した。コホート1の対象は6例で、導入用量は400または 600mg、維持用量は900mg、コホート2の対象は7例で、導入用量は 600または900mg、維持用量は1,800mg とし、いずれも4週ごとに24週間静注投与した。主要エンドポイントはLDHで評価した補体介在性溶血の変化とした。

結果

ALXN1210投与開始後にLDH値は急速に低下し、その効果は24週後まで持続した。
最終評価時のLDH低下率は、コホート1(24週後、6例)では85.9%、 コホート2(20週後、5例)では85.2%であった。
LDH値が正常上限値未満となったのはコホート1では6例中4例、コホート2では5例中4例、正常上限値×1.5倍未満となったのはそれぞれ6例中5例、5例中5例であった。
コホート1の1例は溶血発作を起こし赤血球輸血が必要となった。
赤血球輸血は5例で行われていたが、コホート1の1例を除き4例で不要となった。
FACIT-Fatigueスコアは両コホートで改善したが、ベースラインから24週後の改善率はコホート1が28.7%、コホート2が76.2%であった。
PK解析ではALXN1210の血中濃度半減期は42日であった。
治療関連有害事象はコホート1で6例中5例、コホート2で7例中6例に発現し、最も頻度が高かったのは頭痛(4例)であった。ALXN1210の投与を継続しても重篤な有害事象、試験脱落に至る有害事象の発現、死亡例は認められなかった。

結論

未治療のPNH患者では、ALXN1210の投与によってLDH値で評価した補体C5活性は急速に低下し、その効果は持続した。
LDH値の正常化率、赤血球輸血の必要がなくなった患者割合、疲労の改善度は、いずれもコホート1に比べてコホート2で高かった。
ALXN1210の低用量レジメンはPNH患者の溶血を抑制するには不十分だと考えられた。
現在、ALXN1210を8週ごとに投与する第III相試験が進行中である。

Reference
1) Sheridan D, et al. Immunobiology 2016; 221: 1158

Poster Session 3891

PNHおよび補体介在性疾患の治療における補体C5を標的としたRNAi(ALN-CC5)皮下投与:PNH患者を対象とした第I/II相試験の予備的結果
A Subcutaneously Administered Investigational RNAi Therapeutic (ALN-CC5) Targeting Complement C5 for Treatment of PNH and Complement-Mediated Diseases: Interim Phase 1/2 Study Results
Nader Najafian, et al.
Alnylam Pharmaceuticals, Cambridge, MA, USA

Nader Najafian先生
Nader Najafian先生

背景・方法

ALN-CC5は開発中の皮下注RNA干渉剤(RNAi)で、肝臓における補体C5合成を阻害する。進行中の第I/II相試験(Part A/B)では、健康ボランティアにおいてALN-CC5の忍容性は良好で、C5をノックダウンし、補体活性を抑制することが示された。本研究ではPNH患者を対象とした第I/II相試験Part Cの結果を報告する。
対象はPNH患者6例(未治療3例、エクリズマブ既治療3例)で、エクリズマブ併用(減量)下でALN-CC5 200mgまたは400mgを週1回、3~17回皮下投与した。

結果

ALN-CC5の忍容性はPNH患者においても良好で、重篤な事象や治療中止に至った事象は認められなかった。
エクリズマブ、シクロスポリン、同化ステロイド薬に本剤を併用した1例では、グレード3の肝酵素上昇が発現した。
未治療3例のLDH値はエクリズマブ600mgの4週に1回投与(承認用量の3分の1)で正常化した()。
既治療3例のLDH値はエクリズマブ900mgの4週に1回投与(承認用量の50%)で維持できた()。
エクリズマブとALN-CC5の併用によって、血中の補体C5はほぼ完全に消失した。

結論

ALN-CC5の忍容性はPNH患者においても良好で、補体C5ノックダウン率は高く、補体活性はほぼ完全に阻害された。
肝臓の補体C5合成を標的とした治療法を併用することで、エクリズマブの投与量や投与回数の低減、エクリズマブ効果不十分例では治療効果の増強が期待できる。

図 エクリズマブ併用下でALN-CC5投与後のLDH値の推移

図 エクリズマブ併用下でALN-CC5投与後のLDH値の推移

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監修者のコメント

監修:西村 純一 先生(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学)

今回の3題は、エクリズマブに続く第二世代の治療薬に関するものである。1題目のC3阻害薬APL-2は、エクリズマブでは一部の症例で問題となっている血管外溶血を阻害することにより、ヘモグロビンがさらに増加し、エクリズマブでは輸血依存から脱却できなかった症例も輸血不要になる可能性が期待される反面、感染症のリスクは高まる可能性があり注視していく必要がある。また、連日投与が必要なのが今後の課題となる。2題目のC5阻害薬ALXN1210は、エクリズマブに抗体のリサイクル技術を応用することにより投与間隔を延長し利便性の向上が期待される薬剤で、効果・忍容性はほぼ担保されているものの、長期抑制による有害事象には注意が必要であろう。1回投与量が多くなるのも今後の検討課題であろう。3題目のC5を標的としたRNAi製剤ALN-CC5は、肝臓特異的にRNAを抑制する技術を用いた核酸医薬であるが、C5をRNAレベルでほぼ完全にノックダウンしても、単独ではLDHを十分に抑制できなかった結果を受けて、エクリズマブとの併用の可能性を検討した結果である。この革新的技術は、他疾患にも応用できる可能性がある。第二世代のPNH治療薬を考えるうえで、効果と忍容性はもちろんのこと、投与間隔の延長、投与方法(静注、皮下注、経口)などの利便性、血管外溶血の抑制と感染症リスクのバランス、価格面など多岐にわたるファクターを考慮して、最良の薬剤が淘汰されていくものと思われる。

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