発作性夜間ヘモグロビン尿症と診断されるまでの経緯:再生不良性貧血・骨髄異形成症候群国際財団と米国希少疾患機構がインターネットを用いて実施した探索的研究の結果
Path to Diagnosis of Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria: The Results of an Exploratory Study Conducted By the Aplastic Anemia and Myelodysplastic Syndrome International Foundation and the National Organization for Rare Disorders Utilizing an Internet-Based Survey
Rachel L Mitchell, et al.
Section of Hematology, Rush University Medical Center, Chicago, IL, USA
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、稀な骨髄不全疾患で、血栓症と慢性的な血管内溶血を特徴とする。PNHは患者の生命予後とQOLに悪影響を及ぼすが、患者が症状発症から診断までに、どのような経緯をたどるのかは十分に検討されていなかった。そこで本研究では、再生不良性貧血・骨髄異形成症候群国際財団(Aplastic Anemia and Myelodysplastic Syndrome International Foundation)と米国希少疾患機構(National Organization for Rare Disorders)の協力のもと、患者がPNHと診断されるまでの過程、PNHと診断される過程でQOLにどのような影響が生じたかを検討した。
PNH患者12例を対象に、非構造化面接法でインタビューを行い、初発症状、医療機関受診歴、診断時の経験、疾患にどのように対処したのかを聴取した。その後、診断までの経緯に関する主要な問題について32項目からなる質問票を作成した。
この質問票を、再生不良性貧血・骨髄異形成症候群国際財団と米国希少疾患機構のデータベースに登録されたPNH患者および家族1,066例に電子的に送付した。
PNHは稀な疾患であることから、血液専門医でも診断に時間を要することがある。診断機会の少ない非血液専門医ではなおさらであろうと予想されるが、PNHの初発症状は腹痛や腎障害、ヘモグロビン尿など多岐にわたるため、かかりつけ医を受診することが多く、診断にはかなり時間がかかるのではないかと考えられていた。本研究の結果はある程度その予想を支持しており、診断に1年以上要している患者が比較的多く、主に家庭医や救急科を受診する患者が多いことを示している。本研究の結果からはどの段階で診断がついたのかはわからないが、診断が確定するまでに多数の診療科を受診した患者が少なからず存在することが明らかになった。PNHは疑わないと診断しにくい疾患であるため、医師や患者(社会)に対する啓発活動が重要であろう。
日本人患者の場合、腹痛などの強い自覚症状を来すことは少なく、倦怠感や検査値異常で紹介されることが多いため、結果が若干異なることも予想される。わが国で同様の調査を行った場合、どのような結果になるか興味深い。
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。