ASH2015速報

Poster Session 3264

発作性夜間ヘモグロビン尿症と診断されるまでの経緯:再生不良性貧血・骨髄異形成症候群国際財団と米国希少疾患機構がインターネットを用いて実施した探索的研究の結果
Path to Diagnosis of Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria: The Results of an Exploratory Study Conducted By the Aplastic Anemia and Myelodysplastic Syndrome International Foundation and the National Organization for Rare Disorders Utilizing an Internet-Based Survey

Rachel L Mitchell, et al.
Section of Hematology, Rush University Medical Center, Chicago, IL, USA

Rachel Mitchell先生
Rachel Mitchell 先生

背景・目的

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、稀な骨髄不全疾患で、血栓症と慢性的な血管内溶血を特徴とする。PNHは患者の生命予後とQOLに悪影響を及ぼすが、患者が症状発症から診断までに、どのような経緯をたどるのかは十分に検討されていなかった。そこで本研究では、再生不良性貧血・骨髄異形成症候群国際財団(Aplastic Anemia and Myelodysplastic Syndrome International Foundation)と米国希少疾患機構(National Organization for Rare Disorders)の協力のもと、患者がPNHと診断されるまでの過程、PNHと診断される過程でQOLにどのような影響が生じたかを検討した。

対象・方法

PNH患者12例を対象に、非構造化面接法でインタビューを行い、初発症状、医療機関受診歴、診断時の経験、疾患にどのように対処したのかを聴取した。その後、診断までの経緯に関する主要な問題について32項目からなる質問票を作成した。
この質問票を、再生不良性貧血・骨髄異形成症候群国際財団と米国希少疾患機構のデータベースに登録されたPNH患者および家族1,066例に電子的に送付した。

結果

回答は163例から得られた。回答例の70%は女性であった。
診断前の患者の症状はさまざまで、疲労、虚弱、呼吸困難、頭痛、あざ/出血、背部痛または腹痛、ヘモグロビン尿が認められた。
症状発現から診断までの平均年数は2年未満であったが、患者によってばらつきは大きかった()。
患者の多くが診断までに複数の診療科を受診していた()。血液内科を最初に受診した患者は13%であったが、一度も血液内科を受診したことのない患者も6%存在した。また、患者の11%は精神衛生専門家を紹介受診していた。

図 PNH診断までの期間

図 PNH診断までの期間

クリックすると拡大します。

表 PNH診断までに患者が受診した専門医

表 PNH診断までに患者が受診した専門医

クリックすると拡大します。

結論

本研究は、PNHと診断されるまでの経緯、症状、医療機関受診歴を検討することを目的にデザインされた。
診断までの期間の平均値は2年未満であったが、それまでに複数の医療機関を受診している患者が多かった。
PNHの症状について注意喚起を促し、診断の重要性を啓発することで、診断までの期間を短縮し、診断までに患者が受ける負担を軽減できると考えられる。
診断後に必要な医療資源を充実させることは重要であるが、疾患認知度の向上、症状の理解を促すことで、PNHと診断されるまでの期間を短縮することも重要である。
本研究は診断の遅れが患者転帰に及ぼす悪影響を、患者報告によるQOLを除き、検討するようにデザインされていないが、この領域の研究をさらに進める必要がある。

監修者(鈴木先生)のコメント

PNHは稀な疾患であることから、血液専門医でも診断に時間を要することがある。診断機会の少ない非血液専門医ではなおさらであろうと予想されるが、PNHの初発症状は腹痛や腎障害、ヘモグロビン尿など多岐にわたるため、かかりつけ医を受診することが多く、診断にはかなり時間がかかるのではないかと考えられていた。本研究の結果はある程度その予想を支持しており、診断に1年以上要している患者が比較的多く、主に家庭医や救急科を受診する患者が多いことを示している。本研究の結果からはどの段階で診断がついたのかはわからないが、診断が確定するまでに多数の診療科を受診した患者が少なからず存在することが明らかになった。PNHは疑わないと診断しにくい疾患であるため、医師や患者(社会)に対する啓発活動が重要であろう。
日本人患者の場合、腹痛などの強い自覚症状を来すことは少なく、倦怠感や検査値異常で紹介されることが多いため、結果が若干異なることも予想される。わが国で同様の調査を行った場合、どのような結果になるか興味深い。

ページの上部へ戻る