ASH2015速報

Poster Session 2413

PNHおよび補体介在性疾患の治療において補体C5を標的としたRNAi(ALN-CC5)皮下投与:第I相試験の中間解析
A Subcutaneously Administered Investigational RNAi Therapeutic (ALN-CC5) Targeting Complement C5 for Treatment of PNH and Complement-Mediated Diseases: Interim Phase 1 Study Results

Benny Sorensen, et al.
Clinical Development, Alnylam Pharmaceuticals

Benny Sorensen先生
Benny Sorensen 先生

背景

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は後天的なPIGA遺伝子変異による骨髄障害で、GP-1アンカー型蛋白が欠損し、補体の活性化を制御できなくなり、溶血が進行する。抗C5モノクローナル抗体であるエクリズマブがPNHおよび非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の治療に用いられているが、個体間の血中濃度のばらつきが大きく、血中濃度が治療域を下回る患者が存在することが課題で、新たな補体活性化阻害薬が必要とされていた。ALN-CC5はsiRNAをGalNAcに抱合させ、安定化させた化合物で、200mg/mLを皮下に注射すると肝細胞内に効率的に取り込まれる。

対象・方法

ALN-CC5の第I/II相試験では、まず第I相試験として、健康ボランティアを対象に単回漸増投与試験、反復投与試験が行われた。単回漸増投与試験ではALN-CC5用量は50mgから900mgまで漸増し(各群4例[実薬:プラセボに3:1で割り付け]、合計20例)、反復投与試験ではALN-CC5 100mg、200mg、400mgを週ごとに5回投与した(各群4例[実薬:プラセボに3:1で割り付け]、合計12例)。その後、第II相試験として、PNH患者(16例程度)を対象に反復投与試験を実施する予定である。
本試験の主要評価項目はALN-CC5の安全性と忍容性で、副次評価項目および探索的評価項目として、薬物動態、薬力学、C5濃度、補体活性、LDH(第II相)、QOL(第II相)を評価した。補体活性は補体第二経路(CAP)、補体古典的経路(CCP)で測定した。

健康ボランティアを対象とした単回漸増投与試験

ALN-CC5単回漸増投与時の忍容性は良好で、重篤な有害事象の発現は認められず、試験中止例もいなかった。対象となった20例で有害事象は29件発現したが、すべて軽度から中等度の事象で、薬剤関連の有害事象は3件(鼻咽頭炎、注射部位疼痛、注射部位皮疹)であった。
血清C5ノックダウン率は最大99%、平均98%で、900mg単回投与例では98日後のノックダウン率は96%であった。

健康ボランティアを対象とした反復投与試験

ALN-CC5反復投与時には重篤な有害事象の発現は認められず、試験中止例もいなかった。対象となった12例で有害事象は30件発現したが、すべて軽度から中等度の事象であった。薬剤関連の事象は12件(頭痛、あざ、風邪症状、注射部位浮腫、膣カンジダ症、注射部位発赤、注射部位の痒み、口内炎)であった。
血清中のC5ノックダウン率は最大99%、平均98%で、200mg×5回投与例では112日後のノックダウン率は98%であった()。
C5阻害活性は最大97%、平均値はCAPでは95%、CCPでは96%で、CAPで測定した200mg、400mg投与例の補体活性は、ホモ接合体型C5欠損例のC5活性と同程度であった1))。
血清溶血活性は最大98%、平均84%低下した()。

図 ALN-CC5反復投与試験における血清C5ノックダウン率

図 ALN-CC5反復投与試験における血清C5ノックダウン率

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表 ALN-CC5反復投与試験における補体活性の抑制

表 ALN-CC5反復投与試験における補体活性の抑制

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結論

PNHを含む補体介在性疾患において、ALN-CC5は新しい補体活性化阻害薬として期待されている。
健康ボランティア32例を対象としたALN-CC5の第I/II相試験の中間解析では、同薬の忍容性は良好で、重篤な有害事象は認められず、すべての有害事象は軽度から中等度で、試験中止例はなく、軽度の注射部位反応の発現率も低かった。
血清C5ノックダウン率は高く、単回漸増投与時には最大99%、平均98%、反復投与時にも最大99%、平均98%で、個体間のばらつきは少なく、その作用は長期に持続したことから、月1回投与、3ヵ月ごとの投与も可能だと考えられた。
C5濃度は0.6mg/mLまで低下し、C5活性は最大97%、CAPでは平均95%、CCPでは平均96%まで低下し、血清溶血活性は最大98%、平均84%低下した。
今後、PNH患者を対象とした第II相試験を実施する予定である。

Reference
1)Seelen MA, et al. J Immunol Methods 2005; 296: 187-198

監修者(西村先生)のコメント

ALN-CC5はC5に対するsiRNAをGalNAcに抱合させ安定化させた化合物で、皮下投与によりGalNAcのレセプターであるASGPRを介して肝細胞内に特異的に取り込まれ、C5遺伝子を効率的にノックダウンする。本演題は今年のEHAで第I相試験の単回漸増投与試験の成績が公表されており、今回のASHで反復投与試験の成績が追加された。今回の解析においても、忍容性は良好で、重篤な有害事象は認められなかった。また、作用は長期に持続し、月1回~3ヵ月ごとの投与も可能だと考えられた。今後、PNH患者を対象とした第II相試験が予定されており、引き続き副作用については注意深く注視していく必要がある。特筆すべきは、このsiRNA-GalNAc化合物が機能すれば、肝臓由来蛋白を特異的に抑制する系が確立し、他疾患への適応拡大も大いに期待される。

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