発作性夜間ヘモグロビン尿症および非典型型溶血性尿毒症症候群においてFactor D低分子阻害薬は補体活性化を阻害する
Small Molecule Factor D Inhibitors Block Complement Activation in Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria and Atypical Hemolytic Uremic Syndrome
Eleni Gavriilaki, et al.
Division of Hematology, Department of Medicine, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)はPIGAに変異が生じ、補体制御因子であるGPIアンカー型蛋白CD55およびCD59が欠損する疾患である。一方、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は補体活性化の第二経路を活性化する変異や自己抗体産生などが生じて、内皮障害、血小板活性化、複合的な臓器障害などが進行する疾患である。
エクリズマブはC5に結合して補体活性化を阻害するモノクローナル抗体で、PNHとaHUSに適応を有するが、注射薬であること、PNH患者の約25%は反応性不十分であることなどの課題があった。エクリズマブ反応性不良の機序として、PNH型赤血球にC3フラグメントが蓄積し、症候性の血管外溶血が持続すること、エクリズマブのC5に結合しにくい遺伝子多型の存在が指摘されている。
Factor Dは血清中の全補体蛋白のなかで最も量が少なく、Factor Bを唯一の基質とし、補体活性化第二経路の律速段階を担う因子である。Factor Dを阻害する低分子化合物は、経口投与してもバイオアベイラビリティが高いことから、経口薬としての開発が検討されている。本研究では、Factor Dの低分子阻害薬はPNH患者の第二経路を特異的に阻害するかどうか、aHUSの溶血を検討するin vitroモデルとして修正Ham試験が有用かどうかを検討した(図1)。
Factor D低分子阻害薬は、Factor Bに結合することにより、補体活性化第二経路の増幅経路を抑制する。エクリズマブはPNHやaHUSに極めて有効な薬剤であるが、PNHにおいてはエクリズマブ導入後の血管外溶血の顕在化やエクリズマブ反応不良のC5遺伝子多型等の問題が指摘されている。本薬剤は、PNHおよびaHUS患者の第二経路の活性化を効率的に阻害し、PNH型赤血球を用いたin vitro試験において、C3フラグメントの蓄積を抑制した。さらに、経口投与も可能であることから、エクリズマブの抱える問題を克服し、優れた利便性も期待される。しかしながら、第二経路における増幅経路の抑制のみで実際に生体内で溶血を十分に抑制できるのか、未知の有害事象はないのか等の検証が必要であろう。また、今回示された修正Ham試験は、早期の確定診断が容易でないaHUSの診断の一助となり得るかもしれない。
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。