ASH2013速報

ASH2013 Oral 804

The presence of leukemogenic mutational events in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria suggests that clonal architecture of bone marrow failure is similar to myelodysplastic syndrome

Wenyi Shen, et al.
Department of Translational Hematology and Oncology Research, Taussig Cancer Institute, Cleveland Clinic, Cleveland, OH, U.S.A.


Wenyi Shen 先生

背景

PNHは、後天性PIG-A遺伝子変異を特徴とするクローン性の骨髄幹細胞疾患であり、血管内溶血、血栓症および骨髄機能不全を主徴とする。また、このPIG-A変異によってPNHクローンの外因性増殖優位が獲得されると考えられている。しかしながら、演者らは、以下の3つの観点からPNHの病態の成立にPIG-A以外の遺伝子変異が関与しているとの仮説を立てた。
PNHは多様な臨床経過を辿ること
長期間にわたりPNHクローンが存続することから、PNH幹細胞維持に必要な病的要因が存在する可能性
クローン性という観点からMDSとの類似性
⁃体細胞変異を伴うクローン性造血異常
⁃異常幹細胞クローンの持続と拡大
⁃再生不良性貧血からの移行性
⁃血球減少症を伴う

方法

図1.変異クローン構築カテゴリー別の検出頻度

図1.変異クローン構築カテゴリー別の検出頻度

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図2.PIG-A遺伝子変異の検出

図2.PIG-A遺伝子変異の検出

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結果

  • 解析した58例のPNHクローンサイズの中央値は86%(範囲5.0~99.8)で、WESを実施した12例では94%(63~99.6)であった。
  • クローン構築の解析の結果、PNHではPIG-A変異に加えて、以下の3つのタイプに分類される付加的遺伝子変異が同定された(図1)。
    付加的遺伝子変異が、PIG-A変異獲得の後に生じるタイプ(約52%)
    - CCR9ALDH1B1CPDCELSR2など
    付加的遺伝子変異が、PIG-A変異獲得の前に生じるタイプ(約38%)
    - NTNG1MAGEC1TMC1WDR96など
    クローン原性遺伝子変異を背景として、PIG-A変異がサブクローンとして生じたタイプ(約16%)
    - TET2JAK2SUZ12など
  • なお、PIG-A変異は約73%に検出され、1ヶ所の変異が40%、2ヶ所に変異を有するものが33%であった(図2)。
  • PIG-A以外の遺伝子変異の提示例では、後に約40%が骨髄異形成症候群を発症し、約30%が再生不良性貧血を発症した。

結論

監修者(川口先生)コメント

近年の次世代シークエンスによる遺伝子解析の技術革新は、血液学の研究領域でも広く応用され、白血病や骨髄異形成症候群などで、次々と疾患関連性の高い遺伝子変異が同定されてきた。本研究は、この新技術をPNH研究に応用し、PIG-A変異以外にも多くの付加的遺伝子変異が検出されること、その出現時期はPIG-A変異に先行する場合もあれば遅れる場合もあること、さらにクローン原性の高い遺伝子変異を背景としてPIG-A変異がサブクローンとして現れる場合があること、などを見いだした。この結果は、以前から指摘されていたように、PNHでもMDSと類似した遺伝子変異が起こりやすい造血環境であることを支持しており、今後PNHのクローン性拡大を説明しうるPIG-A以外のdriver mutation(s) の発見を期待させる発表である。

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