ASH2013速報

Poster Presentation 1273

Preclinical Development and In Vivo Evaluation Of Next-Generation Compstatin Analogs With Improved Systemic Profiles: A Novel Option For The Treatment Of Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinurea

Daniel Ricklin et al.
University of Pennsylvania, Philadelphia


Daniel Ricklin 先生

背景

PNHは、CD55およびCD59などの補体制御因子を欠損した血球がクローン性に拡大することによって引き起こされる、補体介在性の溶血性疾患である。エクリズマブは後期補体成分C5に特異的に結合し、血管内溶血を抑制することによって、PNHの諸症状を著しく改善する。その一方で、エクリズマブ治療を開始したことで、前期補体成分C3断片であるC3bのPNH血球への蓄積によるオプソニン化を介した血管外溶血が顕在化し、十分に貧血が改善できない症例も報告されている。そのため、C3を阻害することによって血管内および血管外溶血を抑制できれば、PNH患者にとってより大きな臨床的恩恵をもたらされると考えられる。
コンプスタチン類はC3に結合しその機能を阻害する環状ペプチドである。演者らは、その誘導体であるCp40(分子量=1.7kDa、C3に対するKd=0.5nM、血中半減期=12時間)およびPEG化Cp40(PEG-Cp40)を用いてPNHに対する新たな治療薬の可能性について検討した。

結果

1.
溶血抑制活性
PNH赤血球および血清を用いて、上記コンプスタチン誘導体(Cp40およびPEG-Cp40)の溶血阻害活性を測定したところ、両者ともIC50=~4µMであった。
2.
オプソニン化阻害活性
PNH赤血球にエクリズマブ存在下でC3を活性化させた血清を加えると、PNH赤血球はC3bによってオプソニン化される。この条件下で、上記コンプスタチン誘導体(Cp40およびPEG-Cp40)を10µM添加することにより、オプソニン化は完全に阻害された。
3.
PEG-Cp40の静脈投与における体内動態
カニクイザルに、本剤50mg/kgを静脈投与し血中半減期を測定したところ、5.5日であった。これはCp40より約10倍安定であることを示している。しかしながら、血中におけるC3濃度を約1.25倍上昇させた。
4.
Cp40の連続皮下注における体内動態
カニクイザルに、本剤1mg/kgを12時間毎に投与し本剤の血中濃度を測定した。その結果、2~3回投与後にC3阻害に十分な血中濃度に達した。本剤の血中濃度は、個体のC3濃度に依存するがC3濃度には影響を与えなかった。

結論

1.
Cp40およびPEG化Cp40の体内動態の結果より、これらの化合物がPNHを含む補体関連疾患に対する治療薬として使用できる可能性が示された。
2.
これらの化合物は血管内および血管外溶血を阻害することができるため、PNH患者に対してより高い治療効果が期待できる。
3.
今後安全性の検証が必要であるが、感染時には血中濃度をコントロールしやすいためCp40の皮下投与が最適と考えられる。
4.
Cp40は$1/g以下で合成できるため医療経済的にも価値が高い。

監修者(西村先生)のコメント

C3bのオプソニン化による血管外溶血は、エクリズマブが開発されたことによって顕在化した新たな課題である。
C3を阻害するコンプスタチン誘導体は、医療経済的にも大変魅力的ではあるが、Ex vivo並びにIn vivoにおける有効性の確認に加え、今後慎重な安全性の検証が必要である。

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