Novel evidence that sphingosine-1-phosphate-mediated mobilization of hematopoietic stem/progenitor cells (HSPCs) during intravascular hemolysis requires attenuation of the SDF-1–CXCR4 retention axis of HSPCs in bone marrow niches – implications for paroxysmal nocturnal hemoglobinuria-induced mobilization of HSPCs
Kasia Mierzejewska et al.
Stem Cell Biology Program, James Graham Brown Cancer Center at University of Louisville, KY, USA
PNH患者では、溶血が起きるとPIG-A遺伝子に変異のある造血幹/前駆細胞(HSPC)が末梢血(PB)中へ優先的に遊走することをわれわれは報告した(Leukemia 2012; 26: 1722)。この効果は、①溶解赤血球から放出されるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)が血漿中で増加し、生理的用量でもHSPCに対する重要な走化性因子であることと、②PNHクローン性HSPCは正常HSPCと異なり、骨髄ニッチでのstromal cell-derived growth factor-1(SDF-1)–CXCR4による幹細胞保持が異常であることとによって説明されてきた。定常状態条件下で、末梢血中のS1P濃度は骨髄微小環境の25倍であり、溶血時にはさらに上昇することが知られている。
赤血球は血漿中S1Pの主要供給源であることから、大量の赤血球溶解により、血漿中S1P濃度がさらに上昇しHSPC動員を誘発するかどうかを検討した。さらに、PNH患者でのHSPC動員機構をより明らかにし、S1Pの増加と骨髄微小環境におけるHSPC保持異常の関与とを区別する目的で、フェニルヒドラジン(PHZ)で溶血を誘導した上で、CXCR4拮抗薬AMD3100を用い、骨髄保持性SDF-1-CXCR4阻害の有無によるHSPC動員試験を実施した。
定常状態条件下で、末梢血中S1P濃度はすでに、骨髄中にあるHSPCに対する強力な走化性因子となっている。PNHのHSPCと正常のHSPCとの動員の差を理解する目的で、本試験で初めて、骨髄ニッチにおけるSDF-1–CXCR4による幹細胞保持の減弱が必要であることが示された。以上のことから、PNHのHSPCは、脂質ラフト形成の異常により、骨髄ニッチ内でのCXCR4による保持が障害されているため、より容易に末梢血中に動員されるものと考えられた。最後に、今回のデータから、PNHと比べるとほかの溶血性症候群(鎌状赤血球貧血など)におけるHSPCの動員レベルが、はるかに低いことが理解できる。
Sphingosine-1-phosphate (S1P)は、HSPCに対する化学走化因子として知られ、末梢血の赤血球中に存在する。演者らは、既報(Leukemia 2012; 24: 976)において、PNHではGPIアンカー膜蛋白陰性の造血幹細胞では膜脂質ラフトの形成が不良で、このことに起因してPNHクローン性HSCPは溶血により放出されたS1Pにより、正常HSCPよりも末梢へより誘導されやすいことを報告している。今回の研究では、正常マウスを用いて、S1PによるHSPCの末梢血への誘導が、より高いS1P濃度勾配の形成に加えて、SDF-1-CXCR4系の異常が存在する条件下では、より増強されることを示している。PNHの造血幹細胞の造血微小環境ニッチの異常がPNHクローンの増殖優位性の一部を説明する可能性として着目される。
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