EHA2016速報

Poster Session P633

再生不良性貧血(AA)患者におけるPNHクローンの存在は免疫抑制療法に対する反応性に影響する
The Presence of a PNH Clone Influences the Kinetics of Response to Immunosuppressive Therapy (IST) in Aplastic Anemia (AA) Patients

Division of Hematology, Leukemia/BMT Program of British Columbia, Vancouver, Canada

Emilie Nevill先生
Emilie Nevill 先生

背景・目的

再生不良性貧血(AA)では免疫抑制療法(IST)によって患者の65~75%で血球減少が改善する1)GPIアンカー型膜蛋白を欠損した造血細胞クローン、PNHクローンは、AA患者のおよそ50%で認められる2)。PNHクローンを有するAA患者はISTへの反応性が良好であると考えられている3)。本研究では、地域の二次医療施設において、AA患者のPNHクローンの有無およびサイズが、標準的ISTへの反応性に影響を及ぼすかどうかを検討した。

対象・方法

2008年1月から2015年10月の間に、IST目的にVancouver General Hospitalを受診した16歳以上のすべてのAA患者を対象とした。医療記録はレトロスペクティブに解析された。骨髄病理はセントラルレビューとし、細胞分裂中期の細胞遺伝学的検査を全例に実施して、クローン異常例を除外した。赤血球、顆粒球、単球のPNHフローサイトメトリーは、FLAER、CD55および/またはCD59を含む抗体パネル法を用いて行った。免疫抑制薬としてシクロスポリン、抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン(ATGAM)、メチルプレドニゾロンを用いた。対象をPNHクローンの有無およびサイズで層別し、ISTへの反応性を比較検討した。統計学的検討はFisher's exact testを用いて行い、群間比較にはMann Whitney U testを用いた。

結果

解析対象は55例で、年齢中央値56歳、男性28例、女性27例、重症度は最重症6例、重症29例、非重症20例であった。
PNHクローン陰性は26例、陽性は29例で、陽性群のクローンサイズは1%未満が15例、1%超が14例であった。抗ヒト胸腺免疫グロブリン(ATG)の2回目の投与を受けたのは13例で、その内訳はATGAMが7例、ウサギATGが6例であった。病型は特発性が49例と大半を占めた。
ISTへの反応性は、全体で奏効率70.8%(CR 23.6%、PR 47.2%)、PNHクローン陽性群ではCR 20.7%、PR 44.8%、陰性群ではそれぞれ26.9%、50%で、群間に有意差は認められなかった(p=0.38)(図1)。
経時的に奏効率を検討したところ、PNHクローン陽性群では治療開始後早期から治療に反応する患者が多かったが、陰性群では奏効までに時間を要した(図2)。奏効例のうち、PNHクローン陽性群では全例が12ヵ月後までに奏効したのに対して、陰性群では12ヵ月後までに奏効したのは70%に留まった。
奏効例(39例)の転帰は良好で、中央値15ヵ月後までの追跡で30例が生存かつ奏効を持続しており、再発したのは9例であった。一方、非奏効例(16例)のうち骨髄移植を施行していない症例では生存が4例、死亡が3例、骨髄移植を施行した9例中2例が死亡した。
経過観察期間のPNHクローンの変化は、PNHクローン陽性群では82.8%で変化なし、10%以上の増加は6.9%、10%以下の減少は10.3%にみられた。一方、陰性群では6例(23.1%)でPNHクローンが新たに出現した。クローン出現までの期間中央値は3年、クローンサイズの中央値は0.3%であった。

図1 免疫抑制療法の反応性

図1 免疫抑制療法の反応性

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図2 免疫抑制療法奏効39例の経時的奏効率

図2 免疫抑制療法奏効39例の経時的奏効率

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結論

AA患者においてISTの奏効率は70.8%であった。
PNHクローンの有無やサイズはISTの奏効率に影響を及ぼさなかった。
PNHクローン陽性群と陰性群では奏効が得られるまでの期間に違いがあり、PNH陰性群では奏効が得られるまでに時間を要し、患者の30%は治療2年目で奏効が得られた。

References
1)Young NS, et al. Blood 2006; 108: 2509-2519
2)Socié G, et al. Semin Hematol 2000; 37: 91-101
3) Sugimori C, et al. Blood 2006; 107: 1308-1314

監修者のコメント

PNH型血球は、PNHのみならず、再生不良性貧血(AA)、低リスクの骨髄異形成症候群などの骨髄不全症においてもしばしば検出されることが知られている。AAにおいては約50%以上に認められ、今回のEHAで発表した本邦でのOPTIMA Studyの中間解析(P634)でも、AAの52.7%で陽性であった。PNHクローン陽性例に対する免疫抑制療法(IST)の効果は、陰性例に比べて良好とする報告が多いが、特に小児例での報告などではcontroversialであるとするものも散見される。
本研究では、カナダにおけるPNH 55例を対象に、PNHクローンの有無と標準的ISTの効果、及び予後について解析している。IST奏効例の予後は良好であったが、PNHクローンの有無やサイズはISTの奏効率に影響を与えていなかった。また、クローン陽性群では陰性群と比較して、ISTへの反応がより速やかであり、PNHクローンはISTへの反応性に影響すると結論づけている。

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