EHA2016速報

Poster Session P747

英国における発作性夜間ヘモグロビン尿症のスクリーニング:UK PNH Networkからの報告
Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria Screening Practice from UK Centres: A Report from the UK PNH Network

Leeds Teaching Hospitals, Leeds, UK

Morag Griffin先生
Morag Griffin 先生

背景・目的

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は後天性のクローナルな幹細胞異常で、補体介在性疾患を発症して死亡するリスクが高い。UK PNH Networkは英国でPNH診療を専門とする医師から構成される研究グループで、英国の医療従事者を対象としたPNH教育を目的とする。国際的なフローサイトメトリーのガイドラインでは、PNHリスクのある患者にはフローサイトメトリーによるスクリーニングを推奨しており、骨髄不全症(再生不良性貧血[AA]、骨髄異形成症候群[MDS])、直接クームス試験(DCT)陰性溶血性貧血、原因不明の血球減少、血栓症(原因不明、再発性、血球減少を伴う非定型)の患者が対象になる1-3)。本研究では、英国において、PNHクローンスクリーニングのガイドライン遵守状況を確認し、陽性例ではクローンサイズを調べ、最終診断名を確認し、PNHクローンスクリーニングを繰り返し実施する理由について検討した。

対象・方法

UK PNH Networkのメンバーが患者個人情報を秘匿化したデータを提供した。PNHクローンスクリーニングの実施期間は2014年1月から2014年12月の1年間とした。疾患別にスクリーニング数、PNHクローン陽性率、PNHクローンサイズ、最終診断名、スクリーニングを繰り返す理由を検討した。

結果

PNHクローンスクリーニングは1,579例で実施され、そのうち149例がPNHクローン陽性であった(表)。
スクリーニング数が最も多かったのは血球減少症(579例)であった。
PNHクローン陽性率が最も高かったのはAAで、84例がスクリーニングされ、34例(40%)がPNHクローン陽性であった。ほかにはMDS(16%)、溶血(12%)、血球減少症(11%)でPNHクローン陽性率が高かった。
血栓症患者のPNHクローン陽性率は2%で、1例は顆粒球の99%がPNHクローンであった。
スクリーニング理由がPNH型顆粒球クローン>30%であった疾患は溶血、血球減少症、AA、血栓症などであった。
PNHクローンスクリーニングを繰り返し実施したのは377例で、理由として多かったものは、PNHで治療中(156例)、AAでPNHクローン陽性(108例)、AAからPNHに進展(55例)、AA(22例)などであった。
PNHクローン陽性例(149例)のPNHクローンサイズは、1%未満が最も多かったが、80%以上、90~100%の患者も存在した(図)。
PNHクローンスクリーニングを受けた1,579例の最終診断名は、PNHクローン陽性のAAが57例、スモールPNHクローンが55例、PNHクローン陰性のAAが42例、臨床的PNHが21例、PNHクローン陽性のMDSが16例であった。

表 疾患別のスクリーニング数とPNHクローン陽性率

表 疾患別のスクリーニング数とPNHクローン陽性率

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図 PNHクローン陽性149例のPNHクローンサイズ

図 PNHクローン陽性149例のPNHクローンサイズ

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結論

本研究は英国のPNH治療センターにおける最大規模のスクリーニング実態調査である。
PNHクローンスクリーニングのガイドライン遵守率は高いことが再確認された。
サブグループ解析では、PNHへの進展リスクの高い骨髄不全疾患患者でPNHクローンモニタリングの重要性が示された。
PNHという稀だが致死的経過をたどり得る疾患をスクリーニングし、モニタリングするためには疾患教育の継続が重要である。

References
1)Borowitz MJ, et al. Cytometry B Clin Cytom 2010; 78: 211-230
2)Scheinberg P, et al. Haematologica 2010; 95: 1075-1080
3)Marsh J, et al. Br J Haematol 2009; 147: 43-70

監修者のコメント

2014年に国際臨床フローサイトメトリー学会がまとめた「フローサイトメトリーによるPNHとその関連疾患の診断とモニタリングのガイドライン」(Borowitz MJ, et al. Cytometry B Clin Cytom 2010; 78: 211-230)では、PNH血球の有無を調べる臨床適応として、血管内溶血、原因不明の溶血、非典型部位での血栓症、骨髄不全症などが挙げられている。
本研究は、英国の臨床現場におけるPNHクローンのスクリーニングの現状と、ガイドラインの遵守状況を調査したものである。スクリーニングは概ね適切に行われており、1,579例でスクリーニングが行われ、149例がPNHクローン陽性であった。スクリーニング理由で最多のものは血球減少であったが、中には血栓症のためスクリーニングを行ったところ、顆粒球の99%が陽性であり、おそらく初めてPNHと診断がついた症例も見られた。上記病態の鑑別診断において、フローサイトメトリーによるPNHクローンの検出は極めて有用である。

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