スペインのPNHレジストリの患者コホートにおける急性および慢性腎不全
Acute and Chronic Renal Failure in a Patient Cohort From The Spanish PNH Registry
Hematology Service, Hospital Clínico Universitario San Carlos, Madrid, Spain
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は慢性の造血幹細胞障害で、血管内の溶血性貧血、血栓症リスクの亢進、骨髄不全を特徴とする1-3)。原因はPIGA遺伝子の体細胞変異で、赤血球のGPIアンカー型蛋白が欠損し、補体が制御できなくなり、血管内で溶血性貧血が進行する4-6)。本研究では、急性および慢性腎不全を発症したPNH患者の臨床検査値を調べ、エクリズマブの投与が腎機能に及ぼす影響を検討した。
2014年4月時点でスペインのPNHレジストリには128例のPNH患者が登録された。古典的PNHと診断されたのは60例(47%)で、そのうち27例(45%)は急性および慢性腎不全の発症例であった。この27例を対象に患者背景、臨床検査値、エクリズマブ投与後の腎機能の変化、急性腎不全の発症の有無を検討した。
今回の検討から、エクリズマブを投与したPNH患者では急性腎不全の発症リスクは低く、慢性腎不全の進行は認められないことが示された。エクリズマブを投与した全例が現在も生存していた。
References
1) Brodsky RA, et al. Blood 2008; 111: 1840-1847
2) Hillmen P, et al. Am J Hematol 2010; 85: 553-559
3) Rosse WF, et al. Int J Hematol 2003; 77: 113-120
4) Luzzatto L, et al. Br J Haematol 2011; 153: 709-720
5) Maciejewski JP, et al. Blood 1997; 89: 1173-1181
6) Brodsky RA. Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2008; 111-115
腎不全はPNHの重要な合併症であり、予後を左右する重要な因子の一つである。スペインでのレジストリの報告であるが、エクリズマブ投与後の急性腎不全発症が1例のみであったことから溶血発作の抑制・予防が最も重要であることが明らかである。
レジストリは世界規模で進行中であり、昨年中間報告が発表された。今後、世界規模での症例集積・解析が行われることで一層の病態解明が期待される。
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。