EHA2015速報

Poster Session P631

FLAERを用いたマルチカラーフローサイトメトリーによる発作性夜間ヘモグロビン尿症クローンのスクリーニング:再生不良性貧血患者212例を対象とした単施設研究
Screening of Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria Clones by Multicolor Flow Cytometry Using Fluorescent Aerolysin (FLAER) -A Single Centre Study of 212 Patients

Department of Hematology, Sanjay Gandhi Postgraduate Institute of Medical Sciences, Lucknow, Uttar Pradesh, India

Khaliqur Rahman先生
Khaliqur Rahman先生

背景

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は非悪性のクローン増殖性造血幹細胞疾患で、X染色体PIGA遺伝子の体細胞変異により、GPIのアンカー型膜蛋白が欠損することで生じる。フローサイトメトリーによるGPIアンカー型蛋白欠損の同定は、PNH診断のゴールドスタンダードである。FLAERは細菌由来のチャネルホーミング蛋白アエロリジンの蛍光色素抱合不活性型変異体で、他のGPIと結合した抗体を用いてマルチカラー化することで、PNHクローンの検出感度が高まる。そのため、再生不良性貧血(AA)患者では小サイズのPNHクローンの検出に有用だと考えられる。そこで本研究では、本法を用いてAA患者のPNHクローンが検出できるかどうかを検討し、PNHクローンサイズと生化学的パラメータとの関連性を検討した。

方法

AA患者212例(汎血球減少症のみ172例、溶血を伴う貧血25例、血栓症進行15例)を対象に、FLAERを用いたマルチパラメトリック・フローサイトメトリーを行い、PNHクローンサイズを測定した。臨床所見および臨床検査値は医療記録から調べ、生化学的パラメータとPNHクローンサイズとの関連性を検討した。

結果

PNHクローンは53例(25%)で同定され、汎血球減少症のみ群が26.2%、溶血を伴う貧血群が32%、血栓症進行群が0%であった。FLAERとCD24およびCD14による多形分析を行うことで、サイズが小さくてもPNHクローンを検出できた()。
PNHクローンが同定された53例は、血球数減少の重症度、骨髄所見、他の臨床検査所見、溶血所見から、45例をPNHクローンを伴うAAに、8例を古典的PNHに分類した。
古典的PNH群ではPNHクローンを伴うAA群に比べて、好中球数、網赤血球数の割合、血小板数が多く、LDHが高値であった()。また、古典的PNH群ではPNHクローンを伴うAA群に比べて顆粒球数、単球数、赤血球数の割合が高かった。
PNHクローンサイズが大きい症例を選んで古典的PNH群(7例)とAA群(10例)の臨床検査値を比較したが、古典的PNH群ではLDHが高値で、網赤血球数の割合、血小板数が多かった。
抗胸腺細胞グロブリン(ATG)治療を受けていたAA患者16例のうち3例ではPNHクローンサイズが大きかった。骨髄移植前にPNHクローンが認められたAA患者3例では骨髄移植後にクローンが消失した。
白血球に占めるクローンサイズは赤血球に占めるクローンサイズよりも大きかった。

図 FLAERとCD24およびCD14による多形分析に基づくPNHクローンの検出

図 FLAERとCD24およびCD14による多形分析に基づくPNHクローンの検出

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表 PNHクローンを伴うAA群と古典的PNH群の臨床検査値の比較

表 PNHクローンを伴うAA群と古典的PNH群の臨床検査値の比較

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結論

FLAERを用いたフローサイトメトリーにより、さまざまなサイズのPNHクローンを有するAA患者を検出できた。クローンサイズは生化学的パラメータおよび疾患重症度と相関した。AA患者のPNHクローンサイズは一般に小さいが、クローンサイズが大きい患者も存在した。クローンサイズが大きくても、溶血の生化学的パラメータに変化がなかったことから、治療対象となる患者は少なかった。また、ATG治療を受けたAA患者のクローンサイズは大きかったことから、定期的なモニタリングが必要だと考えられた。

監修者のコメント

フローサイトメトリーはPNH血球検出の必須ツールである。近年、顆粒球PNH血球の検出にFLAER法が用いられつつある。特に、検出感度が良いので再生不良性貧血などの造血不全疾患における微小PNH血球の検出にはFLAER法を用いるのが最適と考えられる。従来の方法では検出できなかった症例のPNH血球のフォローが容易に可能となった。従来の報告ではPNH血球が陽性の再生不良性貧血は比較的免疫抑制療法への反応が良いとされる。FLAER法の普及によって、造血不全疾患の病態解明が期待される。

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