EHA2015速報

Simultaneous Session S828

PNHおよび補体介在性疾患に対する補体C5を標的としたRNAi(ALN-CC5)皮下投与:健康ボランティアを対象とした第I相試験の初回結果報告
A Subcutaneously Administered Investigational RNAi Therapeutic (ALN-CC5) Targeting Complement C5 for Treatment of PNH and Complement Mediated Diseases: Initial Phase 1 Study Results in Healthy Volunteers

Clinical Development, Alnylam Pharmaceuticals

Benny Sorensen先生
Benny Sorensen先生

背景

補体の過剰な活性化によって生じる疾患には、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、視神経脊髄炎、膜性腎症、重症筋無力症などがある。C5活性を特異的に阻害するエクリズマブが登場し、PNHの溶血は抑制できるようになったが、C5活性の変動幅は大きく、C5活性が十分に抑制できず、ブレイクスルーが生じる患者が存在する1, 2)
ALN-CC5は、C5を標的とするGalNAc抱合型siRNAで、C5のmRNAに相補的に結合して、C5をノックダウンし、C5活性を阻害する皮下注製剤である。霊長類を用いた検討では、ALN-CC5はC5発現を用量依存的に最大99.2%まで抑制し、補体活性を96.9%まで阻害し、血清溶血活性を最大平均88.0%低下させた3)。現在、第I相/第II相試験が進行中であり、今回、健康ボランティアを対象とした第I相試験の初回結果を報告した。

方法

ALN-CC5の第I相/第II相試験では、健康ボランティアおよびPNH患者を対象に、本剤を単回漸増投与、反復漸増投与、固定用量で反復投与し、主要評価項目として安全性および忍容性、副次評価項目として薬物動態、C5ノックダウン率、補体活性阻害率を検討した。
今回報告されたのは第I相の単回漸増投与試験の結果である。健康ボランティア12名を、ALN-CC5 50mg群、200mg群、400mg群に4名ずつ無作為に割り付けた。各群では3:1の割合で実薬またはプラセボが投与された。

結果

試験期間中に発現した有害事象を表1に示す。重篤な有害事象、試験薬中止に至った有害事象の発現は認められなかった。軽度の有害事象が6件発現したが、5件は試験薬との関連性はないと判定された。安全性については盲検解除されておらず、有害事象がALN-CC5またはプラセボ投与例のどちらで発現したかは明らかではない。
バイタルサイン、身体検査所見、臨床検査値、心電図所見にも臨床的に意味のある変化は認められず、注射部位反応の発現もなかった。
ALN-CC5の単回投与によって、血清C5は用量依存的にノックダウンされ、400mg群のノックダウン率は最大で96%、平均値で94%であった(表2)。
ノックダウン率にはヒトと霊長類で強い相関が認められ(r2=0.83)、かつヒトでは霊長類に比べてC5ノックダウン率は3~5倍高いことが示唆された。
血清C5のノックダウンに伴って、血清C5活性は著しく低下し、400mg群におけるCCP(補体古典的経路)活性の最大阻害率は92%、CAP(補体第二経路)活性の最大阻害率は87%であった(表2)。
ALN-CC5の単回投与によって、血清溶血活性は61%低下した。

表1 有害事象発現状況

表1 有害事象発現状況

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表2 有効性評価

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結論

PNH患者において、ALN-CC5を単回投与しても重篤な有害事象の発現は認められず、血清C5はノックダウンされ、補体活性、血清溶血活性が著しく抑制された。ALN-CC5の効果は単回投与後1ヵ月が経過しても持続したことから、本剤は月1回の皮下注が適切だと考えられた。
なお、ALN-CC5反復投与の結果は、2015年中に発表される予定である。

References
1) Peffault de Latour R, et al. Blood 2015; 125: 775-783
2) Schutte M, et al. Int Arch Allergy Appl Immunol 1975; 48: 706-720
3) Borodovsky A. ASH, Dec 2014

監修者のコメント

ALN-CC5はエクリズマブと同様にC5活性を標的にしているが、作用機序が全く異なり、siRNAを利用した製剤である。今回は第Ⅰ相試験について報告している。少数例での検討であるが、血中C5活性は低下し、有害事象は比較的軽微なものであった。
今回の報告は健常人に対する安全性の検討であり、患者に対する至適投与量は不明であるが、皮下注射であること、エクリズマブと比較して少ない投与回数で済む可能性もあることから血管確保が困難な患者ではエクリズマブの代替薬として期待される。
また、作用機序がエクリズマブと異なるのでブレイクスルーを起こした患者に対しても効果が期待できるかもしれない。今後、PNH患者を対象とした臨床試験の結果を注視していく必要がある。

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