ASH2011速報 講演2

Poster Presentation 1034

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の小児・青年期患者におけるエクリズマブの安全性と有効性

Ulrike M. Reiss, et al. Department of Hematology, St Jude Children’s Research Hospital, Memphis, TN, USA


Reiss氏

サマリ

米国における小児・青年期のPNH患者を対象とした、エクリズマブの有効性と安全性を判定する12週間のオープンラベル多施設共同試験の結果が示された。 これまでの成人PNH患者の成績と同様の有効性と安全性が確認された。

背景

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は進行性・致死性疾患であり、補体経路のコントロール不良による慢性的な血管内溶血を特徴とする。 PNHでは、骨髄不全による血球減少、溶血による血栓塞栓症、多臓器障害(肺高血圧症、慢性腎臓病など)など死因となる症状に加え、倦怠感、息切れ、勃起不全、腹痛などQOLを著しく損なう症状が発現する。 終末補体阻害薬エクリズマブは、血管内溶血を抑制することによりこれらの症状を改善することが、これまでの臨床試験において示されている。 また、エクリズマブを長期投与(最長8年)した結果、成人PNH患者の生存率を、年齢および性別を適合させた健常者と同程度まで改善することも報告されている。
しかしながら、成人PNHと同様の臨床的所見や合併症が発現するにもかかわらず、主に患者数が少ないという理由から、小児・青年期のPNH患者を対象とした臨床試験は行われてこなかった。 本試験では、小児・青年期のPNH患者におけるエクリズマブのPK/PD、安全性および有効性が報告された。

方法

試験デザイン:12週間のオープンラベル多施設共同試験
組入基準:
‐小児・青年期(年齢:10~17歳)のPNH患者
‐赤血球または顆粒球のクローンサイズ5%以上
‐乳酸脱水素酵素{にゅうさん だつすいそ こうそ}(LDH)値が正常値上限(ULN:275 U/L)を超えるか過去2年間に1回以上の輸血を経験
‐エクリズマブ投与開始2週間以上前に髄膜炎菌ワクチンを接種
用法用量:(30kg以上の場合)
導入期-7±2日ごとに600 mgを4週間投与し、5週時に900 mgを投与
維持期-7週目より14±2日ごと900 mgを投与
評価項目:
‐エクリズマブの体内動態(PK)・溶血抑制活性(PD)
‐有効性評価項目:LDH値、ヘモグロビン値、血小板数、顆粒球および赤血球のIII型血球の割合
‐安全性評価項目:有害事象

結果

小児・青年期PNH患者7例(平均年齢14.4歳;女子4例、男子3例)が登録され、再生不良性貧血および血栓症の既往歴がそれぞれ3例ずつ認められた(表1)。 12週時におけるエクリズマブの平均トラフ濃度およびトラフ濃度中央値はそれぞれ、214.5 mg/mLおよび192.5 mg/mLであった(図1)。 さらに、エクリズマブ投与2週後にはLDHが正常上限値未満まで低下したことから、エクリズマブは迅速に血管内溶血を抑制することが示され、かつその効果は試験期間中維持されることも示された(図2)。 すべての患者に1つ以上の有害事象が見られ、その重症度は軽度4例、中等度2例、重度2例であった。 また、主な有害事象としては頭痛および上腹部痛などであり、有害事象全体のプロファイルは成人で報告されたものと同様であった。 なお、有害事象による脱落例・投与中止例は認められず、全例が12週投与を終了し現在も生存している。

結論

成人での成績と同様、小児・青年期のPNH患者におけるエクリズマブ点滴静注の忍容性は良好であり、迅速かつ持続的な血管内溶血の抑制が認められた。 従って、小児・青年期PNH患者においてもエクリズマブが有力な治療選択肢となる可能性が示された。

表1 ベースライン時の臨床的特性

表1 ベースライン時の臨床的特性

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図1 エクリズマブの血中濃度(ピーク濃度とトラフ濃度)

図1 エクリズマブの血中濃度
(ピーク濃度とトラフ濃度)

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図2 エクリズマブの溶血阻害作用

図2 エクリズマブの溶血阻害作用

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監修者のコメント

世界で初めて米国において、小児・青年期を対象としたエクリズマブの有効性・安全性を判定する臨床試験の結果が示された。 当初2歳から17歳を対象としていたが、実際には年齢は10歳以上(体重30 kg以上)の小児・青年期の患者が登録された。 したがって、エクリズマブの投与量は成人と同じであったが、すべてのポイントで有効血中濃度である35 µg/mLを維持しており、ブレイクスルーもなく、溶血を完全に阻止することが示された。 これまでの成人PNH患者の成績とほぼ同様の有効性と安全性が確認され、エクリズマブは若年患者においてもPNH溶血に対する強力な治療選択肢の1つになったと考えられる。

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