ASH2011速報 Poster Presentation 2102

Poster Presentation 2102

小児患者における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の臨床的特性:成人PNH患者との比較(国際PNHレジストリ)

Alvaro Urbano-Ispizua, et al. Hematology, Hospital Clinic, IDIBAPS, Barcelona, Spain


左:Urbano-Ispizua氏
右:Muus氏

サマリ

5大陸、21ヵ国、204施設を対象とした国際PNHレジストリのデータを用いた、成人PNHと小児PNHの臨床的特性の比較が行われた。 これまでの報告と異なり、骨髄不全疾患の頻度に優位な差は認められなかった。 一方で、成人に比べ血栓塞栓症の発症率が低いことが示された。

背景

PNHは小児では患者数が極めて少ないため、小児におけるPNHの臨床的特性に関する報告はほとんどない。 本報告では、成人PNHの臨床的特性を比較することにより小児PNHの臨床的特性を評価した。

方法

国際PNHレジストリ:
-プロスペクティブ多施設多国籍観察(5大陸、21ヵ国、204施設)
-PNHクローンサイズまたは治療内容による選択・除外基準は設けていない
本解析の対象患者:
-2011年9月30日現在、本PNHレジストリに登録されたPNH患者1,267例のうち、顆粒球のクローンサイズ≧30%の患者で、生年月日、性別、PNH発症日時、登録日、血栓塞栓症の既往に関する正確な情報のある患者を対象
-本対象患者を診断時の年齢18歳未満(小児)、18歳以上(成人)の2群に分けて解析

結果

551例(小児56例、成人495例)が解析対象となった。 登録時における患者背景・臨床的特性は表1、既往歴は表2のとおりであった。 小児では成人に比べ、登録時の血小板数が有意に少なく(p=0.032)、罹病期間も有意に長かった(p<0.001)。 既往歴では再生不良性貧血を含む骨髄不全疾患に頻度の差はなかった。 血栓塞栓症の既往のある患者数は成人で有意に多く(p=0.030)、100患者・年あたりの血栓塞栓症の発現率も有意に高かった(p<0.001)。 特に、静脈血栓塞栓症(p=0.032)、血栓性静脈炎/深部静脈血栓症(DVT)(p=0.023)の発症率では、成人と小児との間に有意差が認められた。
健常小児における血栓塞栓症の発症率は0.0007%であるのに対し、小児PNH患者では10.7%あることから、小児PNH患者の血栓塞栓症の発現リスクは一般小児より15,200倍高いことが示された。
成人と小児を合わせた解析では、診断年齢にかかわらず、登録時の血栓塞栓症の既往のある患者では、腎障害、腹痛、呼吸困難が認められる傾向がみられた(図1)。
また、多変量ロジスティック解析(図2)では、発症年齢≧18歳(p=0.01)、登録時の易出血性(p=0.01)、腎機能障害/腎疾患(p=0.01)が血栓塞栓症の有意な予測因子であった。

結論

小児PNH患者において、成人PNH患者と比較した臨床的特性が確認された。 すなわち、小児PNH患者と成人PNH患者の間で、LDH値、GPI欠損クローンサイズおよびPNHで発現する症状に差はみられなかった。 しかしながら、血栓塞栓症発症率は、成人に比べ小児で低いという結果であった。 また、診断年齢に加え、腎機能障害および易出血性が血栓塞栓症の既往と相関した。

表1 ベースライン時における人口統計的・臨床的特性

表1 ベースライン時における人口統計的・臨床的特性

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表2 登録時の既往歴

表2 登録時の既往歴

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図1 登録前の血栓塞栓症既往に対する有意な関連因子

図1 登録前の血栓塞栓症既往に対する有意な関連因子

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図2 登録前の血栓塞栓症の予測因子

図2 登録前の血栓塞栓症の予測因子

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監修者のコメント

本国際PNHレジストリは、これまで報告が少ない小児PNHの臨床的特性を成人PNHとの比較で明らかにするものであり、小児PNHでも疾病負担は大きく、血栓塞栓症発症リスクは健常小児に比べ有意に高いという結果を示した点で意義がある。 Wareらの報告*によれば、26例中15例(58%)で骨髄不全が認められ、若年患者では成人患者に比べ骨髄不全傾向が強く重症であり、造血幹細胞移植の適応となることが示唆されていた。 本観察研究においては、骨髄不全疾患の発症頻度には有意差がないことが初めて示された。

※Ware RE, Hall SE, Rosse WF. Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria with onset in childhood and adolescence. N Engl J Med 1991;325:991-996.

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