発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)における補体活性化は酸化的障害を引き起こし、エクリズマブ反応性に影響を及ぼすかもしれない
Complement Activation in Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH) Causes Oxidative Damage Which May Affect Response to Eculizumab
Michela Sica, et al.
Cancer Genetics and Gene Transfer - Core Research Laboratory, Istituto Toscano Tumori, Firenze, Italy
PNHは後天的なクローン性造血幹細胞疾患で、PIGA遺伝子の体細胞変異が生じ、細胞表面のGPIアンカー型膜蛋白が欠損する。GPIアンカー型膜蛋白であるCD55およびCD59は補体制御因子であるため、それらが欠損すると補体活性化が制御できなくなり、赤血球が破壊され溶血が進行する。一方、G6PD欠損赤血球にみられる溶血は酸化的障害によることがよく知られている。本研究では、G6PD欠損を伴うPNH型赤血球の溶血に酸化的障害が関与するかどうかをin vitroで検討した。
G6PD欠損男性5例および健康対照5例から採取した赤血球を抗CD55抗体および抗CD59抗体を用いて処理し、PNH様細胞を作成した。赤血球はABO式血液型が適合した血清中でインキュベートし、HCl処理血清により補体を活性化した。反応性酸素種(ROS)産生量は蛍光プローブを用いて蛍光強度から測定した。
PNH様赤血球表面の補体が活性化されたときに、赤血球が抗酸化システムであるG6PDを欠損していると、ROS産生量が増大する。こうした相互作用は、C5阻害によるPNHの溶血抑制にも影響を及ぼすと考えられ、G6PD欠損を伴うPNH患者ではエクリズマブの溶血抑制効果が十分に発揮されない可能性がある。また、エクリズマブ投与によりPNH型赤血球の補体を介した溶血は抑制されても、G6PD欠損赤血球は酸化ストレスに弱く、活性化された補体に起因する酸化ストレスに耐えられず、溶血してしまう可能性もある。G6PD欠損の浸透率が30%以上の地域もあることから、PNHとG6PD欠損との関連性について、今後さらに研究を進める必要がある。
日本人における溶血性貧血として、後天性であるPNHが先天的G6PD欠損症に発症することは極めてまれと考えられる。イタリア人に先天的なG6PD欠損症を基盤として、PNHを発症した稀な女性症例において、エクリズマブの投与後の臨床経過を報告している。LDHが急激に低下したにもかかわらず、輸血依存性や貧血は改善不良がみられ、血管外溶血(C3蓄積)の関与も示唆された。G6PD欠損(Med)に特徴的な形態異常からもG6PD欠損血球における酸化障害の影響を考慮している。in vitroで健常人およびG6PD欠損赤血球を用いてPNH用赤血球[CD55, CD59欠損]の補体活性化によるROS産生を評価し、G6PD欠損PNH様赤血球では補体活性化によってROS産生が増加することを示している。エクリズマブ投与化においても補体活性化(C5以前)は酸化ストレスを介してG6PD欠損PNH赤血球の溶血に寄与する可能性を示した報告である。
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。