後天性再生不良性貧血におけるクローン性造血の経時的解析
Chronological Analysis of Clonal Evolution in Acquired Aplastic Anemia
Tetsuichi Yoshizato, et al.
Department of Pathology and Tumor Biology, Faculty of Medicine, Kyoto University, Kyoto, Japan
後天性再生不良性貧血(AA)は典型的な骨髄不全症候群であり、造血性前駆細胞が免疫系によって破壊されることで生じ、患者のほとんどは免疫抑制療法に反応する。AAでは、しばしばクローン性造血が観察され、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の形質を有するPNHタイプ細胞はAAの約半数に、6番染色体短腕のuniparental disomy (6pUPD)は13%で認められる。さらに患者の10~15%では、長期合併症として腫瘍性クローンが発生・拡大し、骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)に進展する。本研究では、日米の3つのAA患者コホートを対象に遺伝子変異の頻度および経時的変化を調べ、遺伝子変異の保有状況から患者の転帰を層別できるかどうかを検討した。
米国国立衛生研究所(NIH)、金沢大学、クリーブランドクリニックのAA患者コホート439例の666の血液サンプルを用いて解析を行った。82例では経時的にサンプルが収集できた。骨髄腫瘍で遺伝子変異が高頻度で認められる候補遺伝子106についてターゲット・シークエンス解析を行い、52例で全エクソーム・シークエンス解析を行った。変異の経時的変化はPCRベースのシークエンス解析で検討した。
再生不良性貧血(AA)では、PNHやMDS/AMLなどclonal evolutionを認め、変異クローンが発生しやすい造血環境が想定される。発病初期から微少PNH型血球が検出されやすいことはこれを裏付けており、検出方法の工夫次第では他にも変異クローンが検出できるかも知れない。演者らは、AA患者を対象に、次世代シークエンスによる骨髄系腫瘍関連遺伝子の変異解析を行い、約半数に変異クローンを確認している。変異遺伝子の種類は様々で、発現時期に一定のパターンは認めないが、AAで検出頻度が高い変異遺伝子の中には予後予測に役立つものも含まれており、今後の病態理解や臨床応用に役立つことが期待される。なかでもPIGA変異は予後良好群に含まれており、フェノタイプを指標とした微少PNH型血球の臨床的意義と合致しており興味深い。
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。