ASH2014速報

Poster Session 4280

PNHおよび他の補体介在性疾患治療の代替薬としての補体C5小分子阻害薬Coversinの臨床および免疫学的特徴
Clinical and Immunological Characterisation of Coversin, a Novel Small Protein Inhibitor of Complement C5 with Potential As a Therapeutic Agent in PNH and Other Complement Mediated Disorders

Wynne H Weston-Davies, et al.
Volution Immuno Pharmaceuticals (VIP) SA, Geneva, Switzerland


Wynne H Weston-Davies
先生

背景

Coversinはダニ由来の遺伝子組換え蛋白で、補体C5の活性化を阻害し、ロイコトリエンB4に結合する1)。C5に対する作用はモノクローナル抗体であるエクリズマブに類似しており、補体活性化を伴う血栓性および溶血性疾患(非定型溶血性尿毒症症候群[sHUS]、劇症型抗リン脂質抗体症候群[APS]、発作性夜間ヘモグロビン尿症[PNH])治療の代替薬として期待されている。
本報告では、Coversinの補体活性化阻害作用、用量決定試験の結果、エクリズマブ抵抗性変異への作用、免疫原性など、これまでに得られた知見を紹介する。

溶血抑制作用(in vitro

PNH患者から赤血球を採取し、Coversinが溶血を抑制するかどうかを検討した。その結果、CoversinはIII型(GPIアンカー型膜蛋白完全欠損)赤血球の溶血を用量依存性に阻害し、その阻害活性はエクリズマブとモルあたりで等価であった。

第I相用量決定試験

第I相試験では健常ボランティアにCoversinを皮下投与し、終末補体複合体の形成量を評価した。その結果、Coversin最高用量(0.57mg/kg)投与9~12時間後に終末補体複合体の形成は完全に阻害され、その作用は24時間後まで持続した(図1)。この結果から、Coversinは1日1回皮下投与することで補体活性化を完全に抑制できると考えられた。

エクリズマブ抵抗性変異に対する作用

C5にp.Arg885His変異(多型)が生じるとエクリズマブの結合が阻害され、その有効性が低下する2)。CoversinのC5分子への結合部位はエクリズマブとは少し異なるため、多型の影響を受けずにC5活性を阻害しうると考えられる。実際にCoversinはp.Arg885His変異の有無にかかわらず補体活性化を同程度に阻害したが、エクリズマブの補体活性化阻害作用は変異C5の存在下で減弱した(図2)。

免疫原性と中和抗体誘導性

BALB/cマウスにCoversin(0.57mg/kg)を28日間投与したところ、抗Coversin抗体は14日後に33%、28日後には75%で低価発現したが、抗体発現によりCoversinの補体活性化阻害作用は有意な影響を受けなかった。

図1. Coversin投与後の補体活性

図1. Coversin投与後の補体活性

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図2. エクリズマブ抵抗性変異に対するCoversinの補体活性化阻害作用

図2. エクリズマブ抵抗性変異に対するCoversinの補体活性化阻害作用

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結論

Coversinは、エクリズマブの補体C5への最適な結合を阻害する遺伝子多型の保有例などを含めたPNH患者および他の補体介在性疾患患者において、エクリズマブの代替薬になると期待される。

References
1) Roversi P, et al. J Biol Chem 2013; 288: 18789-18802
2) Nishimura J, et al. N Engl J Med 2014; 370: 632-639

監修者(西村先生)のコメント

Coversinはエクリズマブ抵抗例を含むPNHに対してエクリズマブと同等の補体阻害活性を示し、エクリズマブの代替薬への期待が示された。Coversinに対する抗体産生が懸念されるが、マウスの実験からは機能阻害抗体は産生されないようである。今後、ヒトにおいてどうなのか、注視していく必要がある。

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