PNHの予後は症例ごとにさまざまですが、平均生存期間、50%生存期間ともにおおむね20~30年と報告されています。 死因は、欧米では血栓症が圧倒的に多いですが、日本では血栓症は少なく、感染症、出血が主な死因とされています1-2)。
日米比較によると、日米に共通する予後不良因子は、①診断時年齢50歳以上、②診断時重症白血球(好中球)減少症、③重症感染症の合併とされ、日本のみの因子は、①MDSの発症、②腎不全の発症とされています(表1)。 血栓症は日本の症例においても重篤な合併症ですが、頻度が低く、予後不良因子として検出するには至らなかったと推測されます。
海外(英国)では、臨床試験からの使用を含め、2002年~2010年の約8年間にエクリズマブの投与を開始したPNH患者群の生存率が解析されています。 この8年間にエクリズマブの投与を開始した79例と、英国において年齢・性別を整合させた健康な対照集団の生存率を比較したところ、 エクリズマブ投与群と対照集団との間に死亡率の差がみられませんでした(P=0.46,log-rank test)14-①。
また、エクリズマブの使用が可能となる以前に治療を受けていた30例のPNH患者と、 エクリズマブを投与している患者79例との7年間の生存率を比較したところ、エクリズマブ投与患者の生存率で有意な改善がみられています(P=0.01,log-rank test)14-②。
溶血を制御する治療薬のエクリズマブが選択肢に加わった現在、PNHの可能性が高い患者群(図1)におけるPNHの検査、診断の意義はいっそう大きなものとなっています。
PNH血球を同定することは、PNH患者の予後や治療を判定するうえで非常に重要であり、また、骨髄不全におけるPNH血球の存在は、 良性の骨髄不全のマーカーとして考えられており、免疫抑制療法に対する反応性を予想するマーカーとしても有用とされます。 PNH血球の検出に有効とされるフローサイトメトリー法に関しては、現在、骨髄不全症候群およびPNH疑い症例におけるGPIアンカー型タンパク質欠損血球の保有率とその意義を明らかにするための観察研究(OPTIMA)が始動しており、 スタディへの参加患者は微少PNH血球の検出が可能です。
14-① Kelly RJ, et al. Blood. 2011; 117: 6786-6792.
14-② Kelly RJ, et al. Blood. 2011; 117: 6786-6792.
NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。
1) Nishimura J. et al. Medicine. 2004;83:193-207
2) Fujioka S. et al. Acta Hematol JPN. 1989;52:1386-1394