厚生労働省特発性造血幹障害に関する調査研究班による診断基準(平成22年度改訂)を表1に示します。 PNHの診断には、フローサイトメトリー(FCM)を用いたGPI-APを欠損する血球の検出が不可欠であり、そのための試薬として従来の抗CD55抗体やCD59抗体に加えて、FLAER(図1:fluorescent-labeled inactive toxin aerolysin:遺伝子組換えアエロリジンと呼ばれる蛍光細菌蛋白で、 細胞表面上のGPIアンカー部分に特異的に結合する)が新たに推奨されています(保険適応外)。
PNH血球の検出には、古くからHam試験と砂糖水試験が行われてきましたが、今日ではより簡便で感度の高いFCM法が主流となっています。
FCMは赤血球、白血球(顆粒球、単球、リンパ球)、血小板上のGPI-APを検出することができますが、先天的なGPI-APの欠損症例が報告されていることから、PNH診断には少なくとも2系統のGPI-APを検査することが推奨されています。 一般的にはCD55、CD59を検査することが推奨されており、さらに顆粒球上のGPIアンカーの検出には、PNH顆粒球が0.5%以下の集団であっても検出が可能なFLAERが有用であると報告されています(ただしFLAERはそれ自身が溶血を起こすため、赤血球の解析には使用できません)。
溶血によりその集団の数を減らしたPNHタイプ赤血球に比べ、PNHタイプ顆粒球の比率はしばしば高値を示します。 さらに、顆粒球は輸血による影響を受けないため、PNHタイプ血球の比率を経過観察するうえでも有用とされています。 一般的にPNHタイプ血球は、骨髄細胞、末梢血白血球、赤血球の順に出現すると報告されており、PNHタイプ血球の早期検出には、末梢血顆粒球を用いることが推奨されています。
再生不良性貧血(AA)やMDSの不応性貧血で、溶血症状をきたさない程度のPNH血球を持った患者(subclinical PNH; PNH-sc)の場合、免疫抑制療法の奏功率が高い傾向にあることが提唱されています12-①。 したがって、骨髄不全患者を対象にPNH血球を検出することは、免疫抑制療法に対する反応性を予測するうえでも、非常に有意義であると考えられています。
しかし、PNHタイプ顆粒球陽性骨髄不全症例におけるPNHタイプ顆粒球の割合の中央値は0.2%前後と微少であり、陽性と判定される症例の約8割は、PNHタイプ顆粒球の割合が1%未満です。 そのため、通常のFCM検査(PNHタイプの顆粒球が1%以上検出される場合のみに「陽性」と判定する)では、これらのPNHタイプ血球陽性症例は「陰性」と判定され、PNH型血球が見過ごされる可能性があります。 そのため、PNH-scの診断には、0.01%前後の微少PNH血球を検出することができる高感度のFCMを用いることが推奨されています12-①-③。NPO法人「PNH倶楽部」は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者と家族の会です。サポートセンター、医療費助成基金、活動等についての情報が掲載されています。
12-① Wang H, et al. Blood. 2002;100:3897-3902.
12-② Wang SA, et al. Haematologica. 2009;94:29-37.
12-③ Borowitz MJ, et al. Cytometry. B. Clin. Cytom. 2010;78:211-230.