PNHの鑑別診断

PNHの鑑別診断

1998年に行われた特定疾患治療研究事業未対象疾患の調査研究では、溶血性貧血全体の推計受療患者数2,600人のうち、約半数が自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia :以下AIHA)とされ、1/4がPNHと報告されています11-①。 そのため、貧血症状があり、血清の乳酸脱水素酵素(LDH)値上昇、ハプトグロビン低下などの溶血性貧血を疑う所見が認められた場合は、Coombs試験を行ってAIHAを除外する必要があります。 Coombs試験陰性の場合は赤血球形態を確認し、球状などの異常がなければPNHを疑います。 PNHは基本的に溶血性貧血のため、正球性正色素性貧血を示すことが多いとされていますが、ヘモグロビン尿により起こる鉄欠乏が高度の場合は小球性、高度の血管内溶血をきたして網状赤血球が著しく増加している場合は大球性を示すこともあります。

溶血を伴う古典的なPNH(Classic PNH)はLDH上昇を伴うため、LDH上昇を伴わない貧血の場合はPNHのスクリーニングをする必要はありません。 しかし、再生不良性貧血やMDSの不応性貧血(RA)で、溶血症状をきたさない程度のPNHクローンを持った患者(subclinical PNH; PNH-sc)の場合は、免疫抑制療法が有効なため、その検出が重要となります。

嚥下障害、腹痛などの消化器症状を訴える患者の診療においても、貧血を認めれば溶血性の貧血かどうかの確認が必要です。血栓症は日本のPNH患者の症状のなかでは6%11-②程度と低頻度ですが、 通常は認められないような箇所の血栓症症例ではPNHを考慮する必要があり、特に血球減少や血管内溶血が同時に認められた場合は注意を要します。

11-① 大野良之.溶血貧血.特定疾患治療研究事業未対象疾患の免疫像を把握するための調査研究斑.平成11年度研究業績集.2000.p31-88
11-② Nishimura J, et al. Medicine. 2004; 83: 193-207.

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