溶血のメカニズム

溶血のメカニズム

CD55(decay-accelerating factor, DAF)とCD59(membrane inhibitor of reactive lysis: MIRL)は補体制御因子として知られている、GPIアンカー型蛋白質です。 CD55はC3、C5転換酵素を阻害することでC5形成にいたる補体カスケードの前段階を調整するのに対し、CD59はC9に作用することで膜障害複合体(membrane attack complex;MAC)の形成を阻害します。 CD55の遺伝的欠損症(CD59は正常)では溶血はみられず4-①、CD59の遺伝的欠損症(CD55は正常)ではPNH同様の溶血症状が認められる4-②ことから、補体活性化による溶血阻止にはCD59が決定的な役割を果たすと考えられています。

図1:補体カスケードとエクリズマブの作用点 Russell P Rother, et al. NATURE BIOTECHNOLOGY. 2007;25:1256-1264.より改変
図1:補体カスケードとエクリズマブの作用点
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図2:補体溶血のメカニズム 講義録 血液・造血器疾患学. 小澤敬也ほか編. メジカルビュー社; 147;2008より改変
図2:補体溶血のメカニズム
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CD59 は補体カスケードC9に相互作用することにより、血球表面における膜障害複合体(MAC)形成を阻害します。

PNH患者は平常でも軽度の持続的な溶血がみられますが、感染、睡眠、手術、妊娠、ビタミンC大量摂取、鉄剤投与、輸血などさまざまな誘因により強い補体活性化が起こると、短時間で大量溶血(溶血発作)をきたします。 これらの誘因の中でも、臨床的にしばしば問題となるのは感染症とされています。 補体活性化の程度は必ずしも感染症の重症度とは関係なく、軽い上気道炎や胃腸炎でも重篤な溶血発作が誘発されることがあり、注意を要します。

4-① Telen MJ, et al. J. Exp. Med. 1988;167:1993-1998.
4-② Yamashina M, et al. N. Engl. J Med. 1990;323:1184-1189.

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